2021 年 77 巻 2 号 p. I_1333-I_1338
埼玉県消防局及び消防本部によって16年間に渡り記録された熱中症搬送者データに基づき,発症時に暴露されていた気象条件と生理応答を客観解析データ,都市キャノピーモデル,人体の熱収支モデルを用いて再現計算を行った.生理応答の計算には,個人の特徴や活動量を細かく反映し,算出された搬送者の4つの生理量(深部体温,皮膚温度,血流量,発汗量)と搬送者数の傾向から新たな熱中症リスク指標の構築を行った.構築した手法を用いて,実際の搬送者を例に熱中症リスクを推定したところ,比較的熱中症が軽視されやすい夏季夜間の室内においても,高い熱中症リスクを示せることが確かめられた.昨今様々な手法でバイタルデータの取得が容易になってきており,それらの生理量から個人に特化した熱中症リスクの評価に繋がっていくことが期待される.