土木学会論文集B1(水工学)
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水工学論文集第66巻
水温の急変が静止流体中を単独遊泳するオイカワの遊泳特性に及ぼす影響
鬼束 幸樹緒方 亮本松 七海
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2021 年 77 巻 2 号 p. I_1423-I_1428

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抄録

 魚は水温に応じて体温が変化する外温性生物でり,魚の生理反応や行動特性は水温に大きく規定される.現に,工場や発電所停止に伴う水温低下によるティラピアの死亡例や,アメリカシャド生存率が9割低下した例が報告されている.そのため,人為的に河川に排水する場合,水温の急変が魚に及ぼす影響を把握し,それに基づき水温を制御することが必要である.しかし,水温が急変した際の魚の行動特性は明確には解明されていない.本研究では,水温の急変がオイカワの遊泳特性に及ぼす影響を検討した.その結果,20°Cの馴致水温から実験水温が増加すると,オイカワの尾鰭の振動数,総遊泳距離,遊泳速度が増加し,増加温度が10℃の場合はそれぞれの値が約2,1.5,1.3倍に増加する.一方,水温が低下すると逆傾向を示し,低下温度が10℃の場合はそれぞれの値が約1/2,1/2,1/3倍に減少する.また,馴致水温からの水温変化量が少なくとも-10~+5℃の範囲では維持速度とそれ以上の遊泳速度の選択割合は変化しないが,水温が10℃増加した場合,疲労が蓄積する維持速度以上で遊泳する割合が急増する.これは,ストレスを感じたために避難行動をとったことを示唆している.

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© 2021 公益社団法人 土木学会
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