2022 年 78 巻 2 号 p. I_181-I_186
本研究では,パラメータ依存度の小さい河川流モデルの開発を目的として,1D-2Dハイブリッド型河川流モデルと一次元計算用のデータ同化手法を融合して,高精度・低負荷な河川流計算法を開発した.本モデルでは,平面二次元解析並みの計算精度を確保しつつ,一次元解析と同程度の計算負荷や粗度係数同定の容易さを確保できるため,本手法は汎用性の高い河川流計算法となり得る.本モデルの有効性を検証するために,令和元年東日本台風における荒川上流域の洪水流に本モデルを適用した.その結果,粗度係数の推定値は,従来の1D計算法では0.013~0.13m-1/3sであったが,本モデルでは0.020~0.062m-1/3sとなり,推定範囲が1/3~1/2程度減少し精度が上昇した.また,本モデルのピーク水位は平面二次元計算と同程度の精度を保ちつつ,計算時間を75.1~84.2%低減することに成功し,本モデルの有効性が示された.