2022 年 78 巻 2 号 p. I_379-I_384
本研究では地上気温0℃未満での降雪を対象に,現業の偏波レーダーで観測できる高度数百m~1kmより下層の水平偏波のレーダー反射因子ZHの鉛直勾配を評価するための指標の検討を行った.降雪粒子の形状によって変化する位相差変化率KDPを利用し,KDPとZHの比を取ることで,降雪粒子の併合成長に伴う扁平度の低下,粒径の増加を表す指標(AI: Aggregation Index)を定義した.併合成長が支配的となる気温-9℃付近の高度でAIを求めて,その下方から融解層上端までのZHの鉛直勾配との関係を調べたところ,KDP > 0の範囲でAIが大きくなるほどZHの鉛直勾配は大きくなることが分かった.また,地上気温0℃未満の降雪事例で地上での降雪粒子観測を実施したところ,上空の指標AIの減少に伴って,地上での降雪粒子は球形に近く,粒径は小さくなり,着氷成長が優位となっていることを確認した.