2022 年 78 巻 2 号 p. I_541-I_546
本研究は, 多くの人的被害が生じた令和2年7月球磨川豪雨時の御溝川流域に着目した人吉市市街地の氾濫状況及び人的被害の要因を明らかにするため,氾濫シミュレーションによる当時の再現及び地域住民に対するヒアリングを行った.その結果,御溝川周辺では最大浸水深2.7m,最大流速2.4m/sの氾濫被害が生じている場所があったことが明らかとなった.また,御溝川流域では,山地谷筋を流下する河川からの氾濫や水田地域に整備された道路が横堤防の役割を果たしたことが確認された.さらに,御溝川周辺の犠牲者5名の被災場所の豪雨時の氾濫状況を推定した結果,南から球磨川,北から御溝川,西から福川の3方向の氾濫流が発生していたこと,水中歩行が可能な浸水深・流速限界以下であっても犠牲者が発生する危険性があることを示した.