2022 年 78 巻 2 号 p. I_841-I_846
江の川を対象に,三次元環境流体シミュレーターを用いて塩水遡上特性及びアユ仔魚の流下動態の把握を試みた.汽水域の塩分は表層で1~7PSU,底層で海水と同等の30PSUであり,底層は孵化直後のアユ仔魚が生息するには厳しい環境と考えられた.夕方に孵化したアユ仔魚は,河川表層を流下し夜間のうちに9割程度が海域へ到達することがわかった.日中にアユ仔魚が底層に定位する生態を再現したモデルでは,孵化当日に海域に到達しなかった個体は塩分躍層下へ沈降し,大部分が孵化48時間後まで汽水域内に分布しており,1割程度は塩水遡上の影響を受け餌料が海域と比べて少ない汽水域中に留まり成長することが考えられた.そして,本研究手法はアユ仔魚の減耗要因が流下阻害であるかを検討するのに有効的な手法である可能性が示された.