2022 年 78 巻 2 号 p. I_901-I_906
途上国を中心とした衛星プロダクトの活用は,水害への対策だけではなく公共の福利への重要な役割を果たすと期待されている.本研究では,衛星プロダクトから定量的な降水強度を推定することを最終的な目的とし,ひまわり標準データにおける複数の赤外バンドの輝度温度からX-band MPレーダ反射因子を推定する手法を新たに提案し,各バンド帯で比較した.提案する手法は次のとおりである.(1)大量の格子点データを用い,雲域判定 (2)確率的マッチング法による再分布 (3)最適化した数理モデルを用いてレーダ反射因子を推定,である.さらに推定したレーダ反射因子からZ-R関係式を用いて降水強度を算出した.その結果,赤外バンドの3.9μmの波長域を使用して推定したレーダ反射因子から算出した降水強度は,全国合成レーダーGPVの降水強度と比較して二乗平均平方根誤差(RMSE)は5.44mm/hであり,平均絶対誤差(MAE)は2.82mm/hであった.以上から,ひまわり標準データにおける3.9μmの波長域を利用した降水量の推定可能性が他の波長域から推定する場合と比べて相対的に高いことがわかった.