2011 年 67 巻 1 号 p. 1-8
河川流域の土地利用は過去の人間の働きかけの蓄積である.本論は,遠賀川の河川・流域の特性を理解するため,人為的開発が始まった古代の土地開発の変遷を把握しようとするものである.検討にあたっては,地質と地形による基本的な自然条件を整理した上で,縄文時代,弥生時代,古墳時代の各時代の最先端の土木施工技術を勘案しながら,遺跡等の分布と考古学的な研究成果に解釈を加えている.分析の結果,弥生時代の木製の鍬と鋤,古墳時代の鉄製刃先は,水田稲作の伝来以来,沖積地の開発に寄与したといえる.そして開発の対象地は,古墳時代までの土木施工技術に発達に伴って,干潟周辺の低平地から,上流の盆地や源流域に移っている.このような古代の土地開発の歴史は,今後の河川・流域管理を考える上で考慮するべき情報である.