土木学会論文集D2(土木史)
Online ISSN : 2185-6532
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和文論文
  • 阿部 貴弘, 松下 直道
    2020 年 76 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,近世城下町岩国の錦見地区を対象に,その設計論理を解明することを目的とする.分析の結果,錦見地区の街路網は,街区形態の基準を踏まえつつ,雨水の排水勾配を確保するため微地形に配慮して配置されたこと,一方宅地は,背割線を介して隣接する武家屋敷等の奥行に配慮しながら,街路の両側でほぼ等しい奥行となるよう割り付けられたこと等を明らかにした.

     さらに,これらの分析を通して,筆者らが既往研究で提示した城下町町人地の設計論理を読み解くための方法論の精緻化を図り,大坂及び江戸のように大縮尺の近代測量図が遺されていない城下町においても,近世の絵図の分析や近代の微地形図に基づく地形分析を行うことにより,既往研究の方法論が適用可能であることを明らかにした.

  • 高橋 良和, 小嶋 進太郎, Mya San WAI
    2020 年 76 巻 1 号 p. 16-31
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,第二次世界大戦末期に朝鮮半島で建設された複斜材型トラス橋梁について,朝鮮総督府鉄道局の小田彌之亮技師による回顧や当時の雑誌等の記述を組み合わせることにより,その開発の経緯を整理した.戦争時に爆撃の対象となる重要構造物である橋梁について,昭和10年代に行われた耐弾性能を高めるための技術的検討を整理し,内的・外的不静定,吊構造などの異なる技術の組み合わせ(多様性)を推奨していたこと,また高次不静定橋梁の構造計算は,近似的解法による一次応力の算出だけではなく,曲げによる二次応力も算出し,その精度が極めて高いことを証明した.また,中国と北朝鮮間の国際橋梁である鴨緑江橋梁について,その設計,架設状況について整理するとともに,実際の被害を踏まえた耐弾性能について検証した.

  • 小川 健
    2020 年 76 巻 1 号 p. 32-50
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル 認証あり

     針尾無線塔は,日露戦争において無線通信の重要性を認識した旧日本海軍が,1918(大正7)年に着手し,1922(大正11)年に完成させた構造物である.最近,コンクリート構造物の劣化が深刻な社会問題となっているなか,この無線塔は約100年を経た現在でも,ひび割れ,鉄筋の腐食もなく健全な姿を維持している.ところが,施工方法は現存している数枚の写真以外よく分かっていない.ただ,この貴重な遺産を構築した建造技術は,後世に継承されなければならない.そこで,これらの写真やコンクリート表面に残る現象および当時の文献を分析した結果,外側の吊足場を上下移動させて施工する方法や,中練コンクリートを使用した搗固法による締固方法が明らかになった.そして,この搗固法は緻密なコンクリートを生成し,中性化の抑制に有効であることが検証された.

  • 西山 孝樹, 藤田 龍之, 天野 光一
    2020 年 76 巻 1 号 p. 51-70
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,わが国の江戸幕府における「道路行政制度」のなかで,『徳川実紀』に掲載された「橋梁」に関する事項に着目した.その結果,『徳川実紀』に掲載されていた188事項を江戸幕府による政策ごとに分類した.最も多くの事項が掲載されていたのは「法制度」に関する116事項で,架橋や修理に携わっていた「職掌」,橋梁に異常がないか定期的に巡回を行うよう「維持管理」等が定められていた.次いで多かったのは,「架替および修理」に関する68事項であった.なお,「新規架橋」は「修理・架替」よりも少ない28事項で,約4割程度の記載に留まっていた.このようなことから,江戸時代前中期においては,維持管理に重きが置かれ,新規事業は抑えられていたことを明らかにした.

  • 中川 恵, 中井 祐
    2020 年 76 巻 1 号 p. 71-82
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル 認証あり

     関東大震災後の帝都復興では土地区画整理による市街地の面整備によって復興小公園が実現した.本論文では,土地区画整理の議論過程における小規模公園への言及に着目し,小規模公園を配置する構想が土地区画整理を事業手法とする計画として告示される経緯を明らかにした.帝都復興院は計画初期から小規模公園の新設を構想していたが,当初は土地区画整理の施行区域を街路沿いに限定していたため土地区画整理による小公園新設の議論はなかなか具体化しなかった.ところが審議会で復興計画の縮小を求められ,復興院は総経費削減のために土地区画整理の施行区域を街路沿いから焼失地全域に変更した.この方針転換により土地区画整理は街路用地取得の手段から市街地の面整備の手段へとその意義が変化し,土地区画整理を事業手法とする小公園計画が実現した.

  • 簗瀬 範彦, 山本 芳明, 堂柿 栄輔
    2020 年 76 巻 1 号 p. 83-95
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル 認証あり

     土地区画整理事業の換地計画は,個人の財産権に関係する実務であり,法令解釈とも関係することから都市計画の研究対象となることは比較的少なかった.本研究は,土地区画整理の制度化以降の100年間を対象に街区設計における大街区とこれに対応する換地計画の変化を分析し,換地計画の内容である換地設計と清算金算定方式の技術的変遷の過程を明らかにした.研究結果は,街区設計が大規模化する過程の中で申出換地が制度化されたことと,換地設計と清算金算定方式が,比例評価式と比例清算方式に収斂していく過程を跡付けることができた.これにより換地計画の都市計画的な意義を明確にできたものと考える.

  • 鬼塚 克忠, 柴 錦春, 根上 武仁
    2020 年 76 巻 1 号 p. 96-108
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル 認証あり

     半乾燥の黄河中流域で発展した地下埋葬の木槨墓は木炭や粘土で囲うなど様々な地中水対策がなされる.木槨墓は長江流域や朝鮮半島にまで伝播した.多くが長年の間に墓底に留水が生じた.湿潤の長江流域で地中水を避けるために盛土内に埋葬する土墩墓が構築され,これが北部九州の甕棺を有する墳丘墓に変遷し,その後地上に石室を持つ古墳へと発展する.中国東北部で誕生した積石塚は盛り上げた積石塚内に埋葬するもので,石室を有するものへと変革する.北部九州では古墳時代に海岸礫の積石塚がつくられるが,古墳に比べ簡素なもので,地中水対策は見られない.支石墓は,一部甕棺を有する北部九州のものがある.これら甕棺は当地弥生人の地中水対策の一部と考える.古墳は時代とともに多様な地中水対策の変遷が見て取れる.

  • 島 武男, 田中 尚人, 廣瀬 裕一
    2020 年 76 巻 1 号 p. 109-119
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル 認証あり

     近代的技術が導入される明治以前に建設され現在も利用されている歴史的水利システムには,建設当時施された施設管理に対する細やかな工夫が散見される.それらの工夫を現代の技術へ導入することは,重要と考える.本研究では通潤用水を対象として,現地調査および文献調査から施設管理に対する技術的な工夫を明らかにした.通潤用水では,泥ぜん抜きの設置,水路トンネル形状の工夫,通潤橋の放水といった土砂管理の軽減を目的とした工夫が行われていた.また,放水工も水路区間に数多く設置されており,洪水時の施設の安全性に対して慎重に配慮されていた.これらの施設管理に対する細やかな工夫,管理しやすい場所を作りそこを選択的に管理することにより水利システム全体の機能を維持するという設計思想は,現在の技術へ重要な示唆を与える.

  • 井上 敏孝
    2020 年 76 巻 1 号 p. 120-130
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル 認証あり

     本稿は日本統治時代の台湾で計画が立案され,実際の工事が実施された築港工事について着目する.そして策定された計画の特徴と,同工事が戦前の台湾,さらには日本内地における初の施工事例となった点について解明するのが本研究の目的である.

     本稿で分析対象とする新高港は,台湾西部に位置する港で,同港は,日本統治時代末期に商港としてだけでなく工業港としての役割が期待され建設計画が立てられた.そして当初から工業港建設を目的とした工事計画が策定され,工事が実施された台湾で初めての港でもあった.

     以上の点について本稿では当時の工事計画書等の分析を行うことで同築港工事の技術的特徴や工業港としての機能整備の詳細について明らかにした.そして同港築港事業の歴史的意義や戦後に与えた影響について解明した.

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