抄録
近世城下町の町人地は,水路網と街路網が複雑に入り組んだ,水都と呼ぶにふさわしい日本独自の大変興味深い都市構造を有していた.こうした城下町町人地の設計論理を解明しようと,諸分野において長年にわたり研究が行われてきたが,これまでに設計論理を説明する十分な研究成果が得られているとは言い難い.こうした背景を踏まえ,筆者らは,近代測量図の地図計測による定量的分析という新たな方法論を提示し,この方法論に基づき,近世城下町大坂及び江戸の町人地における設計論理を解明してきた.
本研究は,筆者らのこれまでの研究成果を踏まえ,大坂及び江戸の町人地全体の設計論理について再考察するとともに,両者の比較により,それぞれの設計論理の特質を明らかにするものである.