2020 年 76 巻 1 号 p. 1-15
本研究は,近世城下町岩国の錦見地区を対象に,その設計論理を解明することを目的とする.分析の結果,錦見地区の街路網は,街区形態の基準を踏まえつつ,雨水の排水勾配を確保するため微地形に配慮して配置されたこと,一方宅地は,背割線を介して隣接する武家屋敷等の奥行に配慮しながら,街路の両側でほぼ等しい奥行となるよう割り付けられたこと等を明らかにした.
さらに,これらの分析を通して,筆者らが既往研究で提示した城下町町人地の設計論理を読み解くための方法論の精緻化を図り,大坂及び江戸のように大縮尺の近代測量図が遺されていない城下町においても,近世の絵図の分析や近代の微地形図に基づく地形分析を行うことにより,既往研究の方法論が適用可能であることを明らかにした.