2020 年 76 巻 1 号 p. 16-31
本研究では,第二次世界大戦末期に朝鮮半島で建設された複斜材型トラス橋梁について,朝鮮総督府鉄道局の小田彌之亮技師による回顧や当時の雑誌等の記述を組み合わせることにより,その開発の経緯を整理した.戦争時に爆撃の対象となる重要構造物である橋梁について,昭和10年代に行われた耐弾性能を高めるための技術的検討を整理し,内的・外的不静定,吊構造などの異なる技術の組み合わせ(多様性)を推奨していたこと,また高次不静定橋梁の構造計算は,近似的解法による一次応力の算出だけではなく,曲げによる二次応力も算出し,その精度が極めて高いことを証明した.また,中国と北朝鮮間の国際橋梁である鴨緑江橋梁について,その設計,架設状況について整理するとともに,実際の被害を踏まえた耐弾性能について検証した.