土木学会論文集D2(土木史)
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和文論文
1922(大正11)年に完成した重要文化財「針尾無線塔」の施工方法の考察
小川 健
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2020 年 76 巻 1 号 p. 32-50

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抄録

 針尾無線塔は,日露戦争において無線通信の重要性を認識した旧日本海軍が,1918(大正7)年に着手し,1922(大正11)年に完成させた構造物である.最近,コンクリート構造物の劣化が深刻な社会問題となっているなか,この無線塔は約100年を経た現在でも,ひび割れ,鉄筋の腐食もなく健全な姿を維持している.ところが,施工方法は現存している数枚の写真以外よく分かっていない.ただ,この貴重な遺産を構築した建造技術は,後世に継承されなければならない.そこで,これらの写真やコンクリート表面に残る現象および当時の文献を分析した結果,外側の吊足場を上下移動させて施工する方法や,中練コンクリートを使用した搗固法による締固方法が明らかになった.そして,この搗固法は緻密なコンクリートを生成し,中性化の抑制に有効であることが検証された.

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© 2020 公益社団法人 土木学会
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