2021 年 77 巻 1 号 p. 103-120
本研究は,荒川流域における3市町の荒川堤外地を対象に,農地の変遷と地域社会を取り巻く国内外の社会政治的背景との関係から,農業卓越地域としての堤外地の社会的役割の変化を考察したものである.GISを用いて農業の基盤となる地域の地質及び土壌の状況を明らかにするとともに明治期から平成期にかけての農地の変遷状況を定量的に把握し,あわせて郷土資料を用いた文献調査により農地の変遷要因について明らかにした.その結果,荒川堤外地は肥沃な砂礫質土壌を基盤として国家産業としての養蚕を支える桑畑卓越地域であったが,養蚕業の衰退とともに次第に都市近郊農村地域へと変化していった.また,公共性の高い河川空間が求められる中で農地の割合も減少していることがわかった.