2021 年 77 巻 1 号 p. 5-20
本研究は,法定都市計画以前の愛知県豊橋における,道路整備,遊廓移転,電気軌道敷設の都市整備事業について,史料収集,文献調査を行い,それらが複合的に推進された要因を明らかにした.土地の買収,貸付として利益を見込んだ豊橋市による遊廓移転は,都市整備事業に出費した費用を都市経営として賄う戦略であったと考えられる.そして,豊橋電気株式会社の役員らを発起人とする豊橋電気軌道(1次)の出願,特許にあたっては,豊橋電気株式会社が強い影響力を持っていたと考えられる.遊廓移転によって郊外の荒れ地約20,000坪を開発し,そこへ道路を開削,電気軌道を敷設する構想の背景には,豊橋電気株式会社の電気需要創出策があった可能性を指摘し,近代都市の経営という観点から官民が連携した総合的施策展開であると論じた.