抄録
都市経済学分野では,複数都心の形成現象は,複数種類の経済主体(e.g.消費者と企業)が土地市場で競合する場合のみ起こると考えられてきた(Fujita and Thisse, 2002, p.209) .本研究では,単一種類の立地主体しか持たないモデルでも複数都心が創発しうることを,Beckmann型Social Interaction (SI) モデルを例として,明らかにする.さらに,複数都心が創発するための鍵となる条件は,spill over効果のある分散力と,その距離減衰性であることを示す.これを示すために,地代による分散力が働くBeckmann型モデル(SIモデル)と空間競争による分散力が働くBeckmann型モデル(SISCモデル)を対比的に分析する.そして,SIモデルでは単一都心しか創発しない一方,SISCモデルでは複数都心が創発することを明らかにする.