土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
67 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
和文論文
  • 高山 雄貴, 赤松 隆
    2011 年 67 巻 1 号 p. 1-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル フリー
     都市経済学分野では,複数都心の形成現象は,複数種類の経済主体(e.g.消費者と企業)が土地市場で競合する場合のみ起こると考えられてきた(Fujita and Thisse, 2002, p.209) .本研究では,単一種類の立地主体しか持たないモデルでも複数都心が創発しうることを,Beckmann型Social Interaction (SI) モデルを例として,明らかにする.さらに,複数都心が創発するための鍵となる条件は,spill over効果のある分散力と,その距離減衰性であることを示す.これを示すために,地代による分散力が働くBeckmann型モデル(SIモデル)と空間競争による分散力が働くBeckmann型モデル(SISCモデル)を対比的に分析する.そして,SIモデルでは単一都心しか創発しない一方,SISCモデルでは複数都心が創発することを明らかにする.
  • 許 大明, 小林 潔司, 松島 格也
    2011 年 67 巻 1 号 p. 21-38
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,2国で構成される世界経済を対象として,多国籍企業による生産拠点形成を通じた国際分業・国際貿易パターンを分析するための一般均衡モデルを提案する.2国経済は,それぞれ労働生産性が異なっている.多国籍企業も労働生産性が異質であり,グローバルな独占競争市場において差別化された財を生産・販売する.多国籍企業は,生産に当たり差別化された知識資本を必要とする.多国籍企業は国際研究機構とR&D契約を締結し,知識資本を獲得する.多国籍企業は,両国における労働生産性の差異に基づいて生産拠点の立地を決定する.その結果,両国間における貿易パターンが内生的に決定される.その上で,国際的社会資本の整備による輸送費用の変化が,多国籍企業の生産拠点配置,貿易パターン,および両国の家計厚生に及ぼす影響を分析する.
  • 溝上 章志, 江川 太一
    2011 年 67 巻 1 号 p. 39-51
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,中心市街地の無人時間貸し平面駐車場の地権者に対して行った土地利用意向調査データから,現在の時間貸し平面駐車場に至った経緯や理由,今後の土地活用法,希望する利活用用途や用途変更をするために期待する支援策などを明らかにした.さらに,各種用途へ変更した場合の収益率や運用利回りなどを地権者に示して用途変更の意向を聞いた支援策調査データを用いて,地権者の転用用途選択モデルを推定した.このモデルを用いて,指定容積率の最大利用や固定資産税の軽減策など,低・未利用地の効率的利活用を促す各種の支援策の有効性を検討する政策シミュレーションを行った.その結果,これらの施策の適切な導入は費用便益分析や税収といった評価の視点からも効果的であり,中心市街地の活性化に有効であることが検証された.
  • 北岡 大記, 原 英孝, 大枝 良直, 角 知憲
    2011 年 67 巻 1 号 p. 52-59
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     貨物輸送におけるニーズの高度化に対応し効率的な輸送システムとその基盤施設を適正に計画するためには,まず輸送サービスに応じた需要の特性を的確に把握する必要がある.本研究は,所要時間に応じて出・着荷時刻が変化することに着目して,そこに現れる時間領域における社会的要請を定量的に把握することを目的に,品目ごとの出荷時刻決定モデルを作成したものである.本モデルは,人の交通行動においてその生活サイクルを表現するために用いられた効用,非効用の概念を応用して,荷主とキャリアーの業務が一定の従業サイクルの制約の中で行われることを表現した日従業サイクルを考慮し,それに基づいて自動車貨物輸送の時間変動を予測するモデルである.このモデルは,品目ごとに所要時間の長さに応じて変化する出荷時刻の日変動を適正に再現した.
  • 内田 賢悦
    2011 年 67 巻 1 号 p. 60-69
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,移動時間信頼性を考慮した需要変動型均衡配分モデルを提案する.提案する配分モデルは,システム最適,利用者均衡,それぞれの配分原則をベースとし,移動時間信頼性に関係する制約条件を付加した従来モデルの自然な拡張形となっている.これらの配分モデルは,標準的な需要変動型均衡配分と等価な構造を有する問題として定式化される.したがって,大規模な問題であっても需要変動型均衡配分の標準的なアルゴリズムによって容易に解くことが可能である.最後に,テストネットワークを対象とした数値実験を行い,提案したモデルの検証を行った結果を示す.
  • 井料 隆雅
    2011 年 67 巻 1 号 p. 70-83
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     車両を離散化した動的交通量配分問題におけるNash均衡解の解法を提案する.道路の混雑のもつ動的な特性を適正に評価して利用者均衡配分問題を解く動的均衡配分問題の研究は多く行われてきたが,一般的な状況で均衡解を確実に解く方法は知られていない.本研究では,車両を離散化し均衡状態をNash均衡として再定義した上で,車両を1台ずつ最短経路に配分することによってHeuristicな計算をせずに均衡解を解く方法を提案する.この方法は少なくとも特定の条件を満たすネットワーク構造(1起点多終点/多起点1終点など)では必ず均衡解を導出する.また,この方法では,既存研究で一般的なボトルネックモデルに限らず,渋滞の延伸も考慮したより一般的な交通流モデルを適用できる.
  • 坪内 孝太, 大和 裕幸, 稗方 和夫
    2011 年 67 巻 1 号 p. 84-94
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     本稿は四段階推定法などに用いられる交通分担をオンデマンドバスの実走行ログデータを用いて行うシミュレータの開発とその評価について述べる.具体的には,様々な移動手段が実装されたコンピュータ上の仮想都市内で,犠牲量モデルによって適切な交通手段を選択しながら移動する利用者を発生させ,地域内の交通状況を調べるものである.本手法は,利用者の発生にオンデマンドバス実証実験で得られたログデータを用いることで,正確な移動需要の発生状況を模擬できることに特徴がある.
     また,ケーススタディとして,大阪府堺市のLRT導入計画を本シミュレータによって評価し,現地で検討されているものと同等の帰結を得,本シミュレータの結果の信頼性を確認できた.
  • 中山 晶一朗
    2011 年 67 巻 1 号 p. 95-114
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     近年,信頼性の高い道路交通サービスの提供が求められている.本研究では,道路交通の信頼性として求められる機能によって3つに分類できる連結信頼性・時間信頼性・走行信頼性のうち,日常の道路の旅行時間の変動を扱う時間信頼性を対象とする.まず,これまでの研究によって明らかにされてきた交通量や旅行時間の変動特性について整理するとともに,これまでに提案された時間信頼性指標の特徴をまとめる.そして,時間信頼性を考慮した交通行動モデルの分類を行い,それらの既往研究の推定結果を整理し,人々の旅行時間の信頼性の価値について考察する.これらを通じて,時間信頼性の便益算定アプローチを提案し,道路交通サービスに対する時間信頼性を考慮した費用便益分析やその向上のための道路交通管理に資することが本研究の目的である.
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