2011 年 67 巻 3 号 p. 311-326
本研究では,交通企業と沿線商店街が発行する交通・コミュニティカードを中心商店街の活性化に及ぼす影響を分析する.商業地で購入する財の価格と交通費用は,ともに家計の商業地選択行動に影響を及ぼす.その結果,小売店と交通企業の分権的な価格設定行動は,家計行動を通じて金銭的外部性を有することになる.本研究では,交通・コミュニティカードは,交通サービスと財という異なる財・サービスをコモディティとして一体化させ,金銭的外部性を内部化する役割を有することを指摘する.さらに,交通企業が主導的に交通サービス価格を設定し,小売店から交通企業に所得移転を行うことにより,交通企業と商店街が交通・コミュニティカードを自発的に発行する誘引を持つことを理論的に明らかにする.