抄録
近年,住宅の長寿命化政策が進められ,環境負荷の軽減や資産価値の向上などが期待されている.本研究では住宅市場のマッチングモデルを用いて,住宅長寿命化がもたらすさまざまな効果について分析する.家計の住環境へのニーズの変化や,中古住宅取引のためのサーチ行動を考慮したモデルを定式化し,市場均衡に関する数値解析を行う.それによって,住宅長寿命化は耐用年数超過住宅や住宅の取り壊しの減少をもたらす一方,資産価値の減少や,ニーズが変化した家計の住替え機会の減少を導く可能性があることを明らかにする.また,長寿命化政策を補完するために,中古住宅市場の活性化を促進することが効果的であることを示す.