土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
67 巻, 4 号
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和文論文
  • 福本 潤也, 後藤 雄太
    2011 年 67 巻 4 号 p. 390-407
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/20
    ジャーナル フリー
     2004年に国土交通省の下に「自動車の検査・点検整備に関する基礎調査検討会」が設けられた.同検討会は自動車検査証の有効期間延長の社会的影響について推計・試算を行い,有効期間の延長が自動車の安全確保と環境保全に甚大な悪影響を及ぼすと結論づけた.しかし,同検討会の推計・試算で重要な位置づけを占める自動車の不具合率の推計は様々な問題を抱えている.本研究では,同検討会の推計が抱える問題を克服するハザード・モデルを提案する.同検討会が不具合率の推計に用いたデータを使用してハザード・モデルのパラメータを推計する.推計結果に基づき,同検討会による社会的影響の推計・試算結果が過大推計であった可能性を指摘する.
  • 奥村 誠, 高田 直樹, 大窪 和明
    2011 年 67 巻 4 号 p. 408-421
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,ORの分野で研究が進んでいる施設配置問題を理論的基盤としながら,サービス企業の多階層組織配置モデルを構築した.さらに,企業組織に関するマクロな統計データを用いた実証分析を可能にするため,マルコフ連鎖モンテカルロ法による企業特性パラメータのサンプリング手法を導入した.本手法を用いて日本における最近10年間の地域間格差の分析を行った結果,a)都道府県全体では雇用者数の地域間格差変動の9割が産業構造変動に起因し,交通条件変動による影響は1割程度であること,b)交通条件の変化が大きい地域では,交通条件変動の影響が3割に達すること,c)平均賃金の地域間格差変動に関しては,その7割が産業構造変動に起因すること,という3点が明らかになった.
  • 小林 潔司, 貝戸 清之, 江口 利幸, 大井 明, 起塚 亮輔
    2011 年 67 巻 4 号 p. 422-440
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/20
    ジャーナル フリー
     舗装の劣化過程は路面の劣化過程と舗装全体の耐荷力の低下過程で構成される複合的過程である.耐荷力の低下は路面の劣化速度に影響を及ぼす.路面性状調査により路面の健全度を観測できる.一方,耐荷力の低下はFWD調査等により部分的に観測可能である.本研究では,このような特性を有する路面の劣化過程を,舗装耐荷力の状態に依存する混合マルコフ過程として記述する.その上で,路面の劣化過程と舗装耐荷力の低下過程により表現できる複合的な劣化過程を階層的隠れマルコフ劣化モデルとして表現する.さらに,具体的にNEXCOが運営する高速道路を対象とした適用事例を通じて,階層的隠れマルコフ劣化モデルを実際に推計するとともに,実務への適用可能性と有効性について実証的に検証する.
  • 菅原 慎悦, 城山 英明
    2011 年 67 巻 4 号 p. 441-454
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,フランス地域情報委員会(CLI)関係者へのインタビュー調査に基づき,原子力施設をめぐる日本とフランスの自治体関与のあり方を整理した上で両国の比較分析を行い,フランス事例の日本への示唆となる点を指摘する.その結果,両国ではローカル・コンテクストの差が大きいものの,それを考慮した上でなお参照に値する示唆として,(1)原子力規制体系への自治体の位置づけの明確化,(2)事業者及び規制機関と自治体との双方向コミュニケーションの回路の確保,(3)規制目的としての「透明性確保」の明示化,という3点を得た.
  • 柴崎 隆一, 渡部 富博, 家田 仁
    2011 年 67 巻 4 号 p. 455-474
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
     本研究は,我が国をはじめとする各国の港湾・国際物流施策のインパクト計測を目的に,荷主と外航船社両者の最適行動を考慮した,国際海上コンテナ輸送市場の大規模シミュレーションモデルを構築する.具体的には,港湾間海上貨物輸送需要を所与とし,荷主の選択が利用船社に限定される短期モデル(船社の収入最大化モデル)と,地域間貨物輸送需要を所与とし,荷主による利用港湾・背後輸送経路の選択を考慮し,港湾間貨物輸送需要が変化する中期モデル(荷主・船社のナッシュ均衡モデル)を構築する.
     東アジア地域を中心とした大規模国際海上コンテナ輸送ネットワークに対して,地域間貨物輸送需要の実績を与えて試算を行った結果,モデルの収束や再現性が概ね妥当であり,また港湾施策を念頭に置いた感度分析結果も概ね良好であることを確認した.
  • 柴崎 隆一, 渡部 富博, 家田 仁
    2011 年 67 巻 4 号 p. 475-494
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
     本研究は,我が国をはじめとする各国の港湾施策のインパクトを計測することを目的に,国際海上コンテナ輸送市場における,外航コンテナ輸送船社による大規模ネットワーク上の輸送コスト最小化問題を扱う.具体的には,最近の施策の焦点となっている,船舶の大型化に対応するための大水深バースの整備や,貨物が集中することによる港湾費用の低減および過度の集中による混雑を考慮した,外航船社の寄港地および輸送船舶サイズの決定モデルを構築するものである.
     構築したモデルを,東アジア地域を中心とした大規模国際海上コンテナ輸送ネットワークに適用し,モデルの振る舞いが概ね妥当であり,また規模の経済・不経済に関連する感度分析の結果も概ね良好であることを確認した.
  • 丹呉 允, 横松 宗太, 石倉 智樹
    2011 年 67 巻 4 号 p. 495-509
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
     近年,住宅の長寿命化政策が進められ,環境負荷の軽減や資産価値の向上などが期待されている.本研究では住宅市場のマッチングモデルを用いて,住宅長寿命化がもたらすさまざまな効果について分析する.家計の住環境へのニーズの変化や,中古住宅取引のためのサーチ行動を考慮したモデルを定式化し,市場均衡に関する数値解析を行う.それによって,住宅長寿命化は耐用年数超過住宅や住宅の取り壊しの減少をもたらす一方,資産価値の減少や,ニーズが変化した家計の住替え機会の減少を導く可能性があることを明らかにする.また,長寿命化政策を補完するために,中古住宅市場の活性化を促進することが効果的であることを示す.
  • 吉田 護, 小林 潔司
    2011 年 67 巻 4 号 p. 510-527
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,重要インフラに対するテロ攻撃を抑止するためのテロ防御策とその実施に関する情報開示戦略について主観的ゲーム理論を用いて分析する.政府にとってテロリストは「見えない相手」であり,政府のテロ防御策に関する意思決定は,テロリストの存在に関する信念に依存する.また,必ずしも政府とテロリストが共通のゲームを解いて戦略を決定しているとは限らない.このような観点から,本研究では,政府とテロリストの戦略が,各自の主観的ゲームの均衡解として導出されるような状況を定式化する.さらに,政府による警戒水準に関する情報開示策とテロ防御策の実施状況に関する情報開示策では,テロ防御策の実施状況に関する情報開示策を検討する場合の方が,政府の主観的な期待利得が高くなることを示す.
  • 片田 敏孝, 及川 康, 児玉 真
    2011 年 67 巻 4 号 p. 528-541
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
     洪水時の人的被害の軽減のためには,必ずしも「避難」のみが適切な住民行動であるとは限らず,実際には浸水被害の進展状況や家屋形式等の条件により適切な住民行動の内容は大きく異なるものである.本研究では,洪水時の適切な避難行動の形態を住民へより確実に指南することを可能とする新たな形態の洪水ハザードマップである「行動指南型洪水ハザードマップ」を開発・提案する.これは,洪水ハザードマップに対する住民自身の高いリテラシーや,行政と住民との綿密なリスク・コミュニケーションの取り組みを必ずしも前提としなくとも,浸水被害の進展状況や家屋形式などの違いを個別に考慮したうえでの適切な住民行動の内容を住民へ提示することを可能とする点において,従来にはない特徴的な洪水ハザードマップとなっている.
  • 下村 泰造, 藤森 裕二, 貝戸 清之, 小濱 健吾, 小林 潔司
    2011 年 67 巻 4 号 p. 542-561
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,臨海部空港における空港舗装の性能規定型維持管理契約を対象とした最適維持補修モデルを提案する.その際,空港地盤の不同沈下リスク,コンクリート舗装の疲労破壊リスクという2種類のライフサイクル費用リスクに着目する.空港地盤の不同沈下過程はコンクリート舗装の劣化過程に影響を及ぼす.そこで,舗装の劣化過程を地盤沈下過程に依存した非斉次マルコフ過程として表現する.その上で,2種類のリスクを考慮した非斉次マルコフ決定モデルを定式化する.さらに,モニタリング情報に基づいて,空港舗装維持補修計画を逐次ベイズ更新する方法論を提案する.最後に,H空港を対象とした適用事例を用いて,本研究で提案した方法論の有効性を実証的に検証する.
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