2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_243-67_I_254
本研究では,港湾の被災による機能低下が世界経済社会に及ぼす影響を定量的に分析するための枠組みを提示した.具体的には,空間的応用一般均衡モデルと,港湾の機能停止時の輸送構造の変化を表現するための国内陸上輸送モデルを用いて,平常時と被災時の経済状態を表現し,被災による港湾機能の停止が市場を介して世界経済に及ぼす影響を分析した.ケース分析として,名古屋港が機能停止に陥った場合の影響を分析した結果,名古屋港の被災は日本に多大な経済被害を及ぼし,日本国内の生産量を大幅に減少させるだけでなく,家計の厚生の低下という形で被害は諸外国に波及することが明らかとなった.また,長期的な均衡状態を考慮すると,生産要素が被災国から他国へとシフトする現象が見られた.