抄録
日本の郊外団地はかつて「目新しさ」「上流感」を誇っていいたものの,現在では輝きを失っている.郊外団地を居住地として存続していくためには,これらに代わる「なじみ」を醸成する必要がある.「なじみ」を「慣れ」「親しみ」「使いこなす」という要素も含めて定義し,これらの概念を元に兵庫県川西市大和団地でアンケートを行った.因子分析の結果,居住意向に関わる「なじみ」には「慣れ」「親しみ」「必要活動の場所の使いこなし」「任意活動の場所の使いこなし」の四要素が存在することが確認された.また「なじみ」の源泉となる場所には,空間の本質的な役割以上に,特別な想いがそこに込められているということがわかった.つづいて,場所の記憶を地域で共有する取り組みを行い,地域のなじみが向上することが示された.