抄録
東日本大震災により被災地が負った被害は甚大であるが,福島第1原発など発電所自体の被災を発端とする問題は,計画停電や電気使用制限令の発動など関東地方の電力供給不足という形で影響をもたらした.また,全国の定期点検中の原子炉を再稼動させる難しさが露呈される中で,全国的な電力不足の連鎖へと繋がることになり,日本のエネルギー政策上も難しい問題を含んでいる.
本研究では,空間的応用一般均衡モデルを活用して,電力供給不足がどのような経済的被害を生むのかをシミュレートし,特に,本震災での被災地域である東北地方への間接被害はどの程度であるのか,あるいは,50Hz・60Hzの違い等による電力供給の地域間移動が制約されていることがどの程度の被害を生んでいるのかに着目し,定量的に把握することを目的とする.