2013 年 69 巻 5 号 p. I_1-I_14
伝統的な工学的方法論やリスクマネジメントにおいては,それを越える可能性が無視できるような範囲を考察の対象から排除し,想定の範囲内におけるリスクを合理的にマネジメントしようとする立場が採用される.東日本大震災の経験より,既往のリスクマネジメントの考え方は,想定外リスクに対していかに無力であることを思い知らされた.本稿では,あらゆる計画分析方法論が,事前の想定なくしてはなしえないという理解の下に,事前の想定の壁を克服するためのリスク分析哲学の基本的な考え方について整理する.さらに,ポスト実証主義の立場から,専門家と非専門家の間におけるリスクコミュニケーションやリスク分析のあるべき考え方について検討するとともに,土木計画学における実践上の問題を指摘し,土木計画論の課題について考察する.