本研究は,インフラの劣化過程をマルコフ劣化モデルにより表現したうえで,インフラ投資額・長寿命化投資額とインフラストックの推移過程の関係を表現するマルコフ・ビンテージモデルを定式化する.その上で,マクロ経済の資源制約やインフラの経済活動への貢献などを考慮しつつ,社会厚生を最大化する規範的なインフラ投資政策を求めるための動学的インフラ投資モデルを定式化する.最適インフラ投資政策を分析することにより,インフラの長寿命化投資の経済効果には,長期的な家計消費の水準を増加させるストック効果と,世代間のインフラ更新費用負担の平準化をもたらす平準化効果という2種類の便益が存在することを示す.また,数値計算を通じて最適インフラ投資政策・長寿命化投資政策の特性についても考察する.