抄録
本研究では,市区町村単位の空間的応用一般均衡(SCGE)モデルを用いて東日本大震災の経済被害を空間的に把握する.東日本大震災では津波の被害が大きく,被災地域において沿岸部と内陸部では被害の程度が大きく異なる.このことを反映した分析を行うため,全国を市区町村単位で2,342地域に分割し,地域間の財の輸送費用や移出入,所得移転を考慮したSCGEモデルを構築する.また,モデル構築に必要な経済データを,各種の既存統計に基づく推計により作成する.分析では,東日本大震災の影響として被災地域における企業の生産効率の低下を仮定して,経済被害の計測を行った.その結果,被災地域の沿岸部を中心に東北地方で大きく被害が出ていることに加えて,直接の被災地域ではない関東以西の工業地帯にまで被害が波及していることが示唆された.