土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
70 巻, 5 号
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土木計画学研究・論文集 第31巻(特集)
  • 清水 英範
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_1-I_20
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    建築家ヴィルヘルム・ベックマンが明治19年(1886)に立案した東京の都市計画(東京計画)は,国会議事堂の位置を,現在と同じ永田町の丘に示した初めての都市計画である.しかし,この事実は歴史に埋もれ,これまで研究の対象とされてこなかった.本研究は,国会議事堂の位置選定に主眼を置いて,ベックマンの東京計画を初めて詳細に論じ,主に次のような事実を明らかにした.1) 彼の議事堂の位置選定は,当時の政府の方針や新聞・雑誌の報道とは異なる,斬新なものであった,2) それは,彼の確固とした意思と見解,そして,東京の地形への確かな理解に基づくものであった,3) 議事堂の位置を永田町の丘としたことは,放射状道路網の線形設計をはじめ,彼の東京計画全体に支配的な影響を与えた.
  • 貝戸 清之, 小林 潔司
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_21-I_30
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    アセットマネジメントは,そのプロセスごとに,専門技術者の経験や知識という暗黙知に基づいて実施されてきた.アセットメトリクスは,このような暗黙知による経験的な意思決定過程を,形式知による体系的な意思決定過程へと転換することを目的とする.特に,日常・定期点検で獲得できるデータを中心に方法論を構築するという徹底した現場主義を研究開発の哲学としている.また,アセットマネジメント分野においては新規データ取得のためのハードウェア技術よりも,既存データ分析のための知的技術の重要性を指摘するとともに,これはビッグデータの概念と整合的であることを言及する.さらに,アセットメトリクス研究の先端事例を通して,当該分野におけるモニタリング手法のあり方や,統合的リスクマネジメントの展望を述べる.
  • 西山 孝樹
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_31-I_44
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    江戸幕府の河川技術流派である“紀州流”の出所である和歌山県,その北部を西流する紀の川両岸は河岸段丘が拡がり,近世初頭まで溜池と紀の川に注ぎ込む中小河川に堰を設けて灌漑が行われて来た.本研究では,“紀州流”の原点を見出すことを最終目的とし,紀の川上・中流域において荘園が形成された11世紀末以降から近世中期までの灌漑水利の変遷について研究を行った.本研究の結論として,16世紀頃から荘園制度が消滅していき,近世初頭の応其上人による溜池の築堤や改修,紀州藩の事業として紀の川の堤防築堤や用水路開削が行われ,紀の川に対して横断方向の開発から本格的に大規模な縦断方向の新田開発へ転化していったことが明らかとなった.
  • 一丸 結夢, 石田 東生, 岡本 直久
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_45-I_54
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    社会資本は,今後急速に老朽化することが見込まれ,効率的な維持管理が求められている.社会資本の中でも,道路橋に関しては,その多くを市町村が管理しているが,国や都道府県と比較し,十分な予算や技術者が確保できないという課題を抱えている.このような中で市町村が管理する高速道路上の横断構造物をどのように維持管理を実施するかという課題が挙げられる.そこで,本研究では市町村を対象に,現在公表されている「橋梁の長寿命化修繕計画」の内容分析を行うとともに,国土交通省が実施した「橋梁の長寿命化施策に関するアンケート調査」の結果および関係各位へのインタビュー調査の内容も踏まえ,橋梁と高速道路上の横断構造物に関する維持管理の特徴と問題点を整理し,今後の維持管理体制について考察する.
  • 布施 孝志, 渡邉 拓也
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_55-I_61
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    人の移動などにおける地域間の依存関係は,その全体構造を把握する上で重要である.これらの動態を知るために,各種統計データが整備されている.近年では,ベイジアンネットワークなどにより,変数間の依存関係を抽出する手法が発展している.本研究では,ベイジアンネットワークに基づくグラフ構造推定により,ODデータから,地域間の依存関係を視覚化する手法の構築を目的とする.ベイジアンネットワークでは,変数間の依存関係を,条件付き確率を伴う有向グラフで表現する.この関係をB-スプライン非線形回帰モデルでモデル化し,事後確率最大化により,グラフ構造を推定する.有向グラフの組み合わせは多数に及ぶため,情報量規準の下,グラフ構造を決定する.提案手法を,全国幹線旅客純流動調査に適用し,地域間の依存関係の視覚化を試みた.
  • 竹之内 洋樹, 森田 哲夫, 藤田 慎也
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_63-I_73
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,兵庫県南部地震以降,整備が進められている防災船着場について,数学のグラフ理論を用い,負傷者搬送への効果を分析することが目的である.先ず,東京都江東区を対象地域とし,幹線道路ネットワークに防災船着場と河川・水路を組み込んだグラフを作成した.次に,本研究で考案した評価指標を用い,防災船着場を河川・水路を組み込むことにより変化するグラフの構造を分析し,防災船着場整備による負傷者搬送への効果を把握した.その結果,防災船着場の整備による負傷者の病院への搬送効果を検証できた.また,負傷者搬送の観点から防災船着場の重要度を評価した.
  • 藤田 素弘, 大橋 雅也, 坂本 淳
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_75-I_83
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,東海地方に大きな被害をもたらした平成23年台風第15号時の公共交通の帰宅困難状況について調査した.今回の豪雨では,各鉄道路線において復旧状況が異なるため,帰宅できた人と帰宅断念者の割合および帰宅方法が鉄道路線ごとに異なっていることがわかった.鉄道の運行情報の取得状況を調べた結果,取得した情報が正しかったとする人は6割程度となった.帰宅行動選択モデルや帰宅所要時間モデルを構築し,運休情報を取得しない人は帰宅する人が多いこと,運休情報を取得した人でも取得時間帯や方面によって帰宅行動が変わること,また,取得した情報の正確さによって帰宅困難度が大きく変わることなどから,正確な情報を迅速に提供することが帰宅困難者や帰宅困難度を減ずるのに重要であることが確認できた.
  • 福田 崇紀, 奥嶋 政嗣
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_85-I_92
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,南海トラフ巨大地震発生時の津波被害が想定されている地方都市の沿岸平野部を対象に自動車利用避難シミュレーションを適用し,津波避難計画策定において自動車利用避難の問題点を明確にする.避難車両発生の推計結果より,滞留車両のピーク時点では来訪車両が地域内車両と同程度となった.また,楽観的な仮定にも関わらず,東北地方太平洋沖地震での被災地域での平均自動車利用避難率と同程度割合で避難車両が発生した場合には,多数の避難困難車両が発生することが明示された.自動車利用避難率が抑制された場合でも、主要区間の通行不能を仮定すると,多数の避難困難車両が発生することがわかった.一方,事業所からの自動車利用避難を抑制により,避難困難車両数を低減できることがわかった.
  • 谷口 守, 伊勢 晋太郎, 陳 鶴, 村上 暁信
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_93-I_102
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    地球環境問題は深刻化の一途をたどり,根本的に新しいアイデアを導入しなければその抜本的改善は期待できない.特に関係主体の行動を変えてしまうような新たな仕組みの発案が強く期待される.折しもわが国では地方分権が進み,中央政府から自治体に降りてくる裁量と責任が,地球環境問題解決に向けて的確に果たされる必要がある.本研究では自治体が自らの努力で環境バランスを達成すべく住民と行動する上で参考となる新たな試論を提案する.具体的には環境バランス指標を達成するために,市町村の再編と財源の流動化をあわせて検討する仕組みを提示した.その評価指標にはエコロジカル・フットプリント指標等を利用し,茨城県内の全44自治体に適用を行った.その結果,茨城県は16の環境バランスエリアと10の環境バランス未達成のエリアとに再編された.
  • Viengnam DOUANGPHACHANH, Hiroyuki ONEYAMA
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_103-I_111
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    Road roughness condition information is very important for the maintenance planning and management of road infrastructure. Collecting such information is time and resource consuming because it usually requires either, if not all, skillful manpower, substantial budget, and sophisticated equipment. Therefore, collecting and updating road roughness condition is viewed as a big challenge for many road authorities. The final goal of our research is to explore for a low cost and easy to use approach for the aforementioned purpose by using Android smartphones to estimate road roughness and traffic conditions. In this study we develop a model based on a relationship function of smartphone sensor data and road roughness condition. The relationship function is drawn from our experiment in Vientiane, Laos, in which we have found that the acceleration data from smartphones has a linear relationship with road roughness condition and the significant of the relationship also partly depends on speed. The most important and unique feature of the model is the ability to estimate road roughness condition using data obtained from anonymous drivers. Preliminary numerical examples and simulations using real sensor data have been carried out whereas the findings show that performance of the model and results are very promising.
  • 澤上 晋, 稲村 肇, 森地 茂
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_113-I_121
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,建設工事の施工段階における水使用原単位を推計するものである.対象工事は工程管理のガントチャートに基づき詳細な工法に分割される.工法ごとの原単位は,現場の月別水使用量データを施工用,事務所用,宿泊施設用に分解して推計される.国内現場を対象に分析した結果,以下の結論を得た.1) 推計された工法ごとの水使用原単位が,対象工法の優位性比較を可能とする精度を持つことを確認した.2) 推計原単位は,事業での必要水量の総数量だけでなく,管理上重要となる工法ごとのピーク時数量の評価を可能にする.3) ウォーターフットプリントへの応用に向けて,産業連関表など既存統計との整合性を検討した.4) 対象事業の機能と施工数量は水使用原単位の重要指標であるため,評価の段階(計画・設計)による原単位の適用分野について考察した.
  • 川端 祐一郎, 藤井 聡
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_123-I_142
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    物語(narrative, story)の性質は,人文科学において古くから論じられてきたが,近年,社会学・政治学・社会心理学・経営学などの社会科学諸分野においても,人間のコミュニケーション能力や認知能力の本質を理解するための手がかりとして,物語の概念が注目を集めている.しかし,公共政策の策定及び遂行の場面で,物語の性質を実践的に利用する方法が十分に明らかにされているとは必ずしも言い難い.
    本研究では,とりわけ公共政策におけるコミュニケーションに応用しうる理論や発見に焦点を当てて,既往の物語研究の成果をレビューするとともに,物語が公共政策における実践活動をどのように改善し得るかについて考察し,今後行われるべき実証的研究の方向性を提案する.
  • 松浦 正浩, 山口 行一, 山中 英生, 八木 絵香, 坂本 真理子
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_143-I_149
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    政策形成や計画策定の過程では多様な価値観や利害を有する関係者間の調整が行われるが,近年,都市・環境政策分野の研究と実務で,ファシリテーターなどの調整役が注目されている.この調整の実態を探索的に理解する方法論として,「実践のプロファイリング(Profiles of Practitioners)」手法を本研究ではレビューした.現場で起きたことがらをストーリーとして聞き取り,その書き起こしの分析を通じ,合意形成の技法に関する規範的な議論や評価では表出しない実態を捉える手法である.本研究は,合意形成を研究する上で重要な手法として,同手法の特徴と位置づけを明らかにすることを目的としている.
  • 小池 淳司, 佐々木 剛, 佐々木 康朗, 山崎 清
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_151-I_159
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,市区町村単位の空間的応用一般均衡(SCGE)モデルを用いて東日本大震災の経済被害を空間的に把握する.東日本大震災では津波の被害が大きく,被災地域において沿岸部と内陸部では被害の程度が大きく異なる.このことを反映した分析を行うため,全国を市区町村単位で2,342地域に分割し,地域間の財の輸送費用や移出入,所得移転を考慮したSCGEモデルを構築する.また,モデル構築に必要な経済データを,各種の既存統計に基づく推計により作成する.分析では,東日本大震災の影響として被災地域における企業の生産効率の低下を仮定して,経済被害の計測を行った.その結果,被災地域の沿岸部を中心に東北地方で大きく被害が出ていることに加えて,直接の被災地域ではない関東以西の工業地帯にまで被害が波及していることが示唆された.
  • 小池 淳司, 中 洋平
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_161-I_171
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    SCGEモデルのパラメータである地域間の代替弾力性が時間的に安定しているかはわかっていない.地域間の代替弾力性は過去のデータをプールして推定するが,災害や道路整備などにより財の取引構造が変化すると,地域間交易の代替弾力性も変化してしまうことが考えられ,時間的に安定していない可能性もある.SCGEモデルの精度を上げるためにも,地域間交易の代替弾力性の時間安定性を調べた方が良いと考えられる.そこで,日本国内の地域間の代替弾力性の推定に関する既往研究のレビュ―を行い,その中で検討された地域間の代替弾力性の推定方法,使用データを用いて,日本国内の自地域財と移入財の代替弾力性と多地域間の代替弾力性を年別に推定を行う.そして,代替弾力性の値を比較し,時間的に安定しているか調べる.
  • 佐藤 啓輔, 小池 淳司
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_173-I_186
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    空間的応用一般均衡(SCGE)モデルは国際貿易から国内交易まで多様な空間スケールを対象とした政策分析手法として実証的に活用されている.このように空間を扱った分析を行うためには,国家/地域間の財の流動及び,そのための意思決定メカニズムを具備した交易モデル(International / Interregional trademodel)の構築が求められる.交易モデルの構造は,SCGEモデルの最大の特徴である地域別の政策実施効果の分布状況の計測に大きな影響を及ぼすことから,実証分析にあたっては,そのモデル構造の特性を十分に踏まえた活用が必要となる.本稿では,国内地域間を対象とした交易モデルをSCGEモデルに実装するにあたっての既往研究において活用されているモデルの現状及び課題を整理するとともに想定される対応策を示す.
  • 熊谷 兼太郎
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_187-I_196
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    東北地方太平洋沖地震津波の避難行動の津波避難シミュレーションを行い,再現性を検証した.対象は,岩手県釜石市中心市街地における徒歩避難者の避難行動である.シミュレーションでは,建物・街路ネットワーク上に約4,700人を配置し,収容可能人数の制約がある条件付きで最寄りの避難場所への最短経路を選択する経路選択モデルを用いた.また,アンケートで得られた「65歳以上比率」及び「グループ歩行比率」を満たすように避難者の歩行速度の初期値を与えた.シミュレーションで得られた避難完了者の時間的増加を示す曲線は,長距離を避難する行動など再現できていない部分はあるものの,青壮年を中心としたアンケートの結果と近く,リアス式海岸沿岸部の徒歩避難者の避難行動に津波避難シミュレーションをある程度適用できることが分かった.
  • 古橋 隆行, 多々納 裕一, 梶谷 義雄, 玉置 哲也, 奥村 誠
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_197-I_210
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    東日本大震災による経済被害は甚大かつ長期に渡ると考えられている.この未曾有の災害による経済影響を評価するために,産官学の各機関において被害試算が行われているが,その多くはストックの観点から被害を捉えて速報的に算出したものである.しかしながら,将来の災害に対する減災対策の便益評価や,資金準備の適性を図るためには,災害直後から復旧達成までの全過程を通じて生じる経済被害の総額を求める必要がある.そこで本研究では,産業部門を対象として,フローの観点から災害による被害を整合的に評価する方法を提案し,東日本大震災における被災地域を対象とした被害推計への適用を試みた.推計結果としては,震災後1年間で東北・関東に立地する9県で震害により総額3兆4180億円の経済被害額が生じることが示唆された.
  • 大窪 和明, 奥村 誠, 吾妻 樹
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_211-I_220
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    多くの公共施設が耐用年数を迎えようとしている中,国民が受けるサービス水準が低下することのないように,長期的な視点から施設の更新・廃止計画を考えていく必要がある.特に,同じような機能を持つ複数の施設が空間的に散在している場合に,どの施設を維持・更新し,どの施設を廃止するべきかを判断するための科学的手法が求められている.本論文では,老朽化を考慮した施設の更新・廃止計画を検討するために,施設の供用年数を内生化した整数計画問題として多時点最適施設配置モデルを提案する.さらに,提案モデルを仮想的な廃棄物処理施設群に適用し,施設の地理的条件などの要因が施設の更新・廃止計画にもたらす影響を明らかにする.
  • 奥村 誠, 田中 大司, 大窪 和明
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_221-I_228
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    近年,異常少雨による渇水被害が頻発しており,今後の気候変動で降雨の変動がさらに拡大し,利水用ダム貯水池の重要性はますます高まると考えられる.本研究の目的は,ダム貯水池の利水容量の確保がどの程度渇水の軽減をもたらしたのかという点に着目したアウトカム評価方法を提案することにある.まず,アウトカム評価のための3種類の渇水指標を定義する.ついで,貯水池が存在する場合,および貯水池が存在しない場合の渇水指標値の差異として,貯水池のアウトカム評価値を定義する.そしてその値を,貯水池流入量の変動と貯水池の容量によって説明するモデルを作成し,統計分析を行う.さらに,実在するダム貯水池を例に挙げ,統計分析の結果を用いて,将来の流入量の変動状況に対して貯水池がもたらす効果を概算する.
  • 佐藤 啓輔, 吉野 大介, 小池 淳司
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_229-I_240
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    アジアの"Land-locked" countriesと呼ばれている内陸国は,貿易にかかる輸送コストの比重が大きく,これが貿易の発展を阻害する大きな要因となっている.このボトルネックを解消すべくADB等の援助機関が各国政府とともに国境をまたぐ幹線道路の整備を行っているが,これらの幹線道路の整備を各国の経済活動の活性化に繋げるには道路整備が地域経済活動へ及ぼす影響を定量的に把握することが重要である.本研究では,"Land-locked" countriesの一部の国々を対象に,現地の交通・物流状況を整理するとともに既存の統計調査結果を用いた産業・物流の実態を分析する.分析にあたっては,現状把握に加えて応用一般均衡(SCGE)モデルを適用し幹線道路整備による空間的な経済効果の波及状況を算出する.
  • 小谷 仁務, 横松 宗太
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_241-I_254
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    災害復興によって街並みが大きく変わるケースでは,地域住民の慣習や関係性も変化することがある.地域における住民の行動(実践)は,他の住民や地域の環境との共同的実践であり,環境が変化すれば実践の選択も変わってくるからである.本研究では共同的実践の構造を定式化し,ゲーム理論を応用して,地域の「伝統的実践」と「革新的実践」の成立可能性や比率の変化過程について分析する.さらに,被災地域に以前からいる住民と新しく転入してきた住民との間に介在する,伝統の経験量の差異と情報の非対称性がもたらす影響を明らかにし,多様な実践が共存するための方策について検討する.
  • 山田 菊子
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_255-I_265
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    計画の策定段階において,有識者や市民の発言を参照するこころみは数多くあるが,発言の取扱いには確たる方法はない.本研究ではその原因が作成された要約が計画の主体や時期を反映していないために生じると仮定し,人間中心設計で用いられるシナリオを援用して課題に対処する方法を提案する.計画の対象である「時期」と「ステークホルダー」の組み合わせごとにシナリオとして記述し,さらにこのシナリオから考慮すべき特性を抽出する.
    事例研究では2つの発言録を分析し,土木学会の中長期計画策定者へ結果の提供を行った.その結果,シナリオは原記録よりも理解が容易であり,また一般的な要約に比べて情報を失わない点で計画策定に貢献することを把握した.さらに,出現する語の頻度を分析し,シナリオと原記録との対応を確認した.
  • 古屋 秀樹, 全 相鎮
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_267-I_277
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,平成24年度に実施した「国民の観光に関する動向調査」データを用いて,消費行動や旅行行動への志向と宿泊観光旅行の発生回数,今後の旅行内容への意向との関連性の把握を目的とする.まず,消費行動,旅行行動の志向データを用いて,主成分分析,クラスター分析により被験者をそれぞれ10セグメントに分類した.そして,これらのセグメントを含めた個人属性が年間宿泊観光旅行回数に与える影響を数量化I類によって分析したところ,旅行行動セグメントは年収と同程度の影響をおよぼすことが明らかとなった.さらに,これらセグメントや個人属性と今後実施したい旅行内容への意向との関連性の分析を行ったところ,性別や年齢階層区分よりも消費行動セグメント,旅行行動セグメントでばらつきの大きい意向を有することが明らかとなった.
  • 西村 卓也, 石倉 智樹, 小根山 裕之, 鹿田 成則
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_279-I_293
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    街路ネットワークの計画設計では,実際の利用特性に見合うように個々の街路の交通機能を確保させることが強く求められている.その背景の中,接続特性を指標化できるSpace Syntax理論が近年注目されているが,利用特性と接続特性指標の関係については未だ明確な整理がなされていない.
    本研究では,Space Syntax理論の分析手法であるSegment Angular分析によって定量的に表される街路ごとの近接性と媒介性が,実際の利用特性とどのように関係しているかを分析する.その結果,近接性はその街路の実利用のされやすさと,媒介性はその街路を実利用するトリップのOD特性の多様さとの関係が見られ,これらの接続特性指標がそれぞれの街路の利用のされ方を想定する際に活用できる可能性を示すことができた.
  • 平井 寛, 武田 岳, 南 正昭
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_295-I_303
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は盛岡市松園地区に居住する40歳以上の住民を対象とした自記式調査のデータを用いて,買い物環境の条件として,食料品を入手可能な小売店舗から居住区までの距離,利用可能な交通手段,家族等による買い物の代行サポート,宅配等のサービス利用などが,肉・魚の摂取頻度,野菜・果物の摂取頻度に関連するかどうかを検討することである.肉・魚の摂取頻度は,男性,一人暮らし,歩行可能な距離に店舗がない者で少なくなりやすかった.野菜・果物の摂取頻度は,非高齢者,男性,一人暮らし,子世代のいる世帯,歩行可能な距離に店舗がない者で低くなりやすいという関連が示された.
  • 金井 昭彦
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_305-I_314
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    19世紀フランスにおいては鉄道黎明期から,エンジニアや建築家によって駅舎配置計画類型の理論的分析が行われた.その中で標準型とされたのは,出発と到着の諸室を線路両側に配置する両側面型であった.また,フランスにおいては,旅客は荷物を預けた後は,出発直前まで待合室にいなくてはならず,ホームに立ち入ることは許されていなかった.当初からこの搭乗方式は批判が相次いだが,自由入構制度が導入されるまでには半世紀近くも要した.やがて,新方式が導入されたことによって,駅舎配置も影響を受け,待合室よりエントランスホールが機能上重要となり,徐々にL型配置が採用されるようになる.本研究では,フランスにおける駅舎配置計画の理論的分析と,実際の歴史的変遷の影響関係を明らかにする.
  • 正木 恵, 加賀谷 大生, 寺部 慎太郎, 葛西 誠
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_315-I_321
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    本論文では,我が国の観光立国には,多くの都市において観光資源を有効活用することが重要であると考え,「ご当地グルメ」を潜在的な観光資源の例として用いて,観光資源としてのご当地グルメの成熟度(栄枯盛衰)を測る方法を考案することを目的とした.まず「讃岐うどん」と「ネルソンの商業立地の法則」をヒントに,観光資源としてのご当地グルメの成熟度がその店舗の立地により把握できるのではないかという仮説を立てた.そして地方20都市の28種のご当地グルメ店舗を独自にデータ整備し,その立地を表す「集積度」や「向心力」を用いて回帰モデルの残差分析を行うことで,ご当地グルメの観光資源としての成熟度とその集積の関係性を示唆した.
  • KLAYSIKAEW Krairerk, 古屋 秀樹
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_323-I_333
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    タイ有数の観光地であるアユタヤは,1991年に世界文化遺産に登録されて,世界中から多くの観光客が訪れ,独自の観光資源は伝統文化や古都の遺跡として諸国の観光客に注目されている.さらなる観光地としての発展と観光振興のために,現地でのアンケート調査を踏まえた来訪者の行動特性や評価の実態把握を本研究の目的とする.2011年3月に回収された409サンプルを対象に偏相関係数分析,層別回帰分析を用いて居住地別評価特性を把握した.その結果は,日本人の占める割合が大きいこと,居住地ごとの利用交通機関や評価に違いがあることが明らかとなった.さらに,今回の回収されたデータは,アジア・オセアニアから除く日本人の占める割合が多いため,日本人はアジア・オセアニア居住地に含めないで,明らかにすることとした.
  • 羽鳥 剛史, 中神 ちなつ
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_335-I_341
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    地域コミュニティの自律的な改善を促進する上では,地域住民自身が地域の問題解決に向けて発言することが期待される.しかし,地域住民は,地域全体の利益の増進を意図した協力的な発言を行うだけでなく,個人の私的利益の増進のみを意図した非協力的な発言を行う可能性も考えられ,地域の問題解決を阻害することにもなりかねない.本研究では,地域住民の協力的発言と非協力的発言の心的要因をそれぞれ明らかにすることを目的として,松山市民(n = 328)を対象とした実証調査を実施した.この調査では,社会ジレンマや苦情行動等の関連する社会心理学理論を基にして,地域住民の規範意識や地域愛着,住民特権意識や離脱意図等を測定し,協力的発言意図及び非協力的発言意図との関連性を検討した.最後に,地域計画やまちづくりに示唆する点を考察した.
  • 山形 与志樹, 村上 大輔, 瀬谷 創, 堤 盛人
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_343-I_351
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    企業間の業務交通が産業集積の一因であることは古くから指摘されている.そこで本研究では,パーソントリップ(PT)調査の業務交通トリップデータを用いて産業集積の度合いを計測することを試みる.具体的には,小ゾーン単位の東京都市圏PT調査の産業分類別打合せ・会議トリップに空間スキャン統計量(spatial scan statistics)を適用することで,東京23区における産業分類別の打合せ行動の空間的な集積やその変化を考察する.また,当該集積パターンと産業分類別従業員数の空間集積パターンを比較し,後者が前者を必ずしも拿捕し得るものではないことを指摘する.本研究の結果は,08年東京PT調査では対象外とされた業務交通トリップに関する調査が,face to faceのコミュニケーションの定量化のための有用な基礎資料と成り得ることを実証的に示すものである.
  • 前岡 健一郎, 神田 佑亮, 中野 剛志, 久米 功一, 藤井 聡
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_353-I_369
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    現在,世界は数多くのリスクに晒されている.世界経済フォーラムの報告書によると,中でも「システミックな金融危機」は世界に与える影響が最も大きいリスクとされており,発生確率も上昇傾向にある.そこで,本研究では,リーマンショックに端を発した世界金融危機に対して,どのような国民経済が強くしなやかな,高い強靭性を有した国民経済であったかを探索的に分析を行い,我が国の経済を外生的ショックから回復の早い経済にするための知見を得ることを目的とする.分析の結果から,GDPや失業率のしなやかな回復を果たすためには,公共投資の拡大に基づく財政出動は有効なマクロ経済政策であることが示唆された.
  • 鈴木 雄, 木村 一裕, 日野 智, 金子 侑樹
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_371-I_382
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究では「買い物をすることで気分転換することができる」や「自分の好きな商品を手に取り購入することができる」などの買い物における多様な価値と,各種買い物弱者支援方策に対する利用意向について高齢者に着目し分析を行った.多くの高齢者が買い物における多様な価値を必要だと感じていることが示された.買い物における多様な価値を必要だと思っているにも関わらず,それが達成されていない人の把握も行えた.また,買い物先(店舗)の利用実態や交通手段によっても多様な価値の達成に差があることが示された.買い物支援方策の利用意向を示した高齢者の方が,買い物における多様な価値を必要としている割合が高い結果となった.買い物支援方策の利用によって,買い物における多様な価値が達成される可能性があることも考えられる.
  • 鈴木 雄, 木村 一裕, 日野 智, 折井 貴臣
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_383-I_393
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    高齢化が進むなかで,高齢者にとっての健康維持や健康増進は重要な社会的課題である.本研究では,冬期の高齢者の健康活動に着目し意識調査を行った.調査の結果,健康活動を行うことで気分転換になるなど,その効果の認識は高いことが示された.しかし,冬期の健康活動の頻度や内容は低下している.特に,積雪により近所の散歩を行うことができない高齢者が多くみられた.冬期に十分な健康活動を行えていない高齢者は,歩道が安全に整備されていない,どんな運動をすれば良いかわからない,家の近所で運動する場所がないなどと回答している.交通面,情報面,施設面それぞれにおいて困難な状況にあることが明らかとなった.また,これらの高齢者において,歩きやすい歩道を整備することなどの方策が望まれている結果となった.
  • 谷本 圭志
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_395-I_403
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    高齢者にとって外出は,自身の運動機能や認知機能を用いる機会であるため,健康維持に有効と考えられ,特に公共交通を利用した外出はより寄与があると考えられている.しかし,介護予防のために国や自治体が把握に努めている高齢者の多様な生活機能について,公共交通を含めた外出手段がそれらの維持にどれだけ影響を及ぼしているのかに関しては検証がなされていない.そこで本研究では,地方都市を対象に,生活機能の側面に着目した高齢者の健康の推移とその個人が利用している外出手段の関係を大規模なデータを用いて実証的に検討する.
  • 大庭 哲治, 松中 亮治, 中川 大, 北村 将之
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_405-I_414
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    長年にわたって地域の商業活動の中心を担ってきた商店街の衰退が進んでいる.衰退の原因は様々であるが,商店街は街の賑わいを生む場であり,他の商業施設にはない価値を有する.多様な特徴を持つ商店街の賑わいと土地利用及び業種構成の現在の関係に着目して,本研究は,京都市内86商店街の土地利用及び業種構成を現地調査によって詳細に把握した上で,賑わいとの関連性を定量的に分析した.
    その結果,小売業(食品系)の割合と歩行者密度は正の関連を有すること,駐車場・低未利用地の割合と歩行者密度や路線価には負の関連があること等,土地利用及び業種構成によって商店街の賑わいが異なることを明らかにした.
  • 森田 紘圭, 金岡 芳美, 加藤 博和, 柴原 尚希, 林 良嗣
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_415-I_422
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    現在から将来にかけての家族構成変化と住宅性能向上による世帯起源のCO2排出量の変化を推計するため,世帯の生活スケジュールからCO2排出量を推計するモデルを構築し,家族類型,住宅種別,居住地,交通機関からなる詳細属性ごとの世帯起源CO2排出量データベースを作成した.これを用いて,名古屋20km圏の市区町村を対象に世帯起源CO2排出量を小学校区単位で推計し,住宅及び家電に係る技術革新による影響を分析した.その結果,1)現状では単身世帯の多い都心において1人あたりCO2排出量が大きくなっていること,2)将来的には世帯人員が減少し1人あたりCO2排出量は増加すること,3)スマートハウスの普及が進めば,郊外でのCO2排出量が減少し,余剰電力が多く発生すること,が明らかとなった.
  • 小平 裕和, 日比野 直彦, 森地 茂
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_423-I_432
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,観光目的の自動車利用に対する施策の検討に必要となる基礎的な情報を得ることを目的とし,観光統計および交通統計の個票データを用い,自動車利用の実態を明らかにするものである.本稿では,年齢階層別,利用形態別,観光地での行動別に,利用者の特徴を明らかにしている.また,数量化II類を用い,自動車利用に影響を与える要因を明らかにしている.さらに,観光目的の高速道路利用による主要観光地付近のインターの出発県および通過台数の時系列変化を明らかにしている.
  • 大柳 和紀, 小嶋 文, 久保田 尚
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_433-I_441
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,古くから存在する生活道路における地域の特性「地域DNA」に着目し,生活道路と幹線道路との交差点における交通事故の要因分析を行った.生活道路が幹線道路の形成,及び拡幅により分断されてできた交差点を「地域DNA型交差点」と定義し,それらの交差点の危険性について,埼玉県南部の地域を対象として,交通事故データ,及びカーナビゲーションシステムから得られた急ブレーキデータを用い,分析を行った.その結果,事故発生件数,急ブレーキ発生件数の両面において,地域DNA型交差点でその発生頻度が高いこと,安全施設の有無等他の交通要因を考慮した上でも,地域DNA型交差点であることが事故及び急ブレーキの発生に影響していることが示され,地域DNA型交差点の危険性が示された.
  • 土井 健司, 紀伊 雅敦, 松居 俊典
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_443-I_452
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    線引き制度は,無秩序な市街地拡大の防止を目的として1968年の新都市計画法で導入された.本研究が着目する香川県は,田園都市構想と線引き制度とを同時期に,それぞれ総合計画および都市計画の要として導入した.その後,前者は地域・都市づくりの基本理念として連綿と受け継がれているが,後者については2000年以降に制度廃止を必然とする意見が卓越し,2004年には全県レベルで線引き廃止が決定された.本稿は,目標都市像としての田園都市構想とその実現手段の一つとしての線引き制度との不整合に注目し,計画体系の観点から制度廃止の原因や経緯を考察することを目的としている.また,線引き廃止後に導入された新たな土地利用規制の効果を分析し,衰退に向かう地方部の再都市化を促す集約型都市構造の実現に必要とされる制度設計の課題を示す.
  • Kazuki NAKAMURA, Masato FUJITA, Hirokazu KATO, Yoshitsugu HAYASHI
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_453-I_462
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    Sustainable transport systems are increasingly required for Asian developing cities where economic growth causes further burden to the environment from urban transport. However, environmental performance is hardly prioritized for their transport policies, and it is therefore necessary to make such transport systems more attractive. This study is aimed at quantitatively evaluating the attractiveness of transport mode in Asian developing cities. With data of a questionnaire survey in Bangkok, it measures the levels of preferences for various attractiveness factors in travel, classifying them into convenience, comfort and safety elements. Using the parameters of preferences, the attractiveness of travel is evaluated for car, conventional bus, and mass rapid transit both for a current situation and potential improvement. The results show that, while the attractiveness varies by income and age, public transport can be as attractive as car by improving the quality of mass rapid transit.
  • 堂柿 栄輔, 梶田 佳孝, 簗瀬 範彦
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_463-I_475
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,地方都市都心商業地域での路上駐車の非放置路上駐停車行動を,実態調査に基づく統計的分析からその特性を示した.街路の滞留機能1)については,昭和63年及び平成2年に交通対策本部2)が施策をまとめ,その中で「秩序ある駐車の推進」に表現されるように,いくつかの街路機能の共存が重視されるようになった.その結果,平成18年からは民間の駐車監視員による放置自動車の取り締まりが開始されたが,この放置自動車の重点的な取り締まりは非放置駐車の増加や駐車時間の長時間化を伴うこととなり3),アイドリングを伴う駐車の増加等新たな問題も発生している.統計分析では,この様な駐車特性相互の関係も考慮した.
  • 宮崎 一浩, 日比野 直彦, 森地 茂
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_477-I_486
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    我が国の都市鉄道は,新線建設,高頻度運行等の輸送力増強施策による混雑緩和対策やネットワークを活用したシームレスな輸送サービスの提供等,利便性の向上に取り組んできた.その反面,稠密なダイヤ構成や運行形態の複雑化により,慢性的な遅延の発生,広域波及といった新たな課題が顕在化している.本研究は,都市鉄道における列車遅延の発生,波及の要因について,路線の特性を踏まえつつ,実績値データを用いた現状の把握を目的としている.また,輸送サービスの維持と遅延解消の両立に向け,ラッシュ時における列車の運行を再現するシミュレーションモデルを構築し,計画ダイヤ上の発時刻前に列車を発車(以下「早発」という)した場合の影響を定量的に示している.
  • 河尻 陽子, 金森 亮, 山本 俊行, 森川 高行
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_487-I_500
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    各都市でカーシェアリングサービスの拡充が進んでいるなか,本研究では名古屋市を中心に事業展開されているカーシェアリングの利用実態の把握を目的に,運営管理データを分析する.用いた運営管理データは数カ月間の車両GPSデータや予約データであり,利用車両軌跡の追跡による利用目的の把握,クラスター分析による利用パターンの把握,地域特性を考慮した利用目的判別モデル(決定木)を構築する.分析結果から名古屋のカーシェアリングは男女で利用パターンが異なること,利用直前の予約が多いこと,私事目的での利用が最も多いこと,を明らかにした.
  • 北澤 俊彦, 塩見 康博, 田名部 淳, 菅 芳樹, 萩原 武司
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_501-I_508
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    近距離無線規格であるBluetoothの普及を背景とし,諸外国ではBluetoothのMACアドレス(個体識別ID)を路側で把握することで旅行時間計測やOD計測など交通調査に活用する試みがなされている.わが国でもBluetoothを搭載した電子機器や通信機器が市場に出回るようになっていることから,受信機を設置した任意地点間の旅行時間が計測可能と考えられる.
    本研究では,BluetoothのMACアドレスを計測・記録して旅行時間計測を行うための調査システムについて検討するとともに,実環境で容易に利用可能な計測ツールの開発を行った.さらに,一般道路や都市高速道路を対象として旅行時間を観測したケーススタディを通じて,Bluetoothを用いた旅行時間計測に関する基礎的な分析を行い,現段階でも旅行時間調査に適用可能なシステムであることが確認できた.
  • 福田 大輔, 伊藤 海優
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_509-I_520
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,世帯における車種(軽自動車・乗用車)別の複数保有行動,ならびにそれらの自動車の利用行動(走行距離)を記述可能な動的離散-連続モデルを構築し,近年我が国で継続的に行われている世帯の自動車保有と利用に関するパネルデータを適用することで,世帯における自動車保有-利用の構造的な関係とそれらの規定要因に関しての実証分析を行った.ベイズ推定によってモデルパラメータを推定した結果,女性免許保有者の割合が高い世帯や低収入な世帯であるほど乗用車よりも軽自動車の保有傾向が強くなること等が示された.また,保有,利用それぞれの行動における異時点間での状態依存関係が確認された一方で,保有と利用の行動の間には明確な関連性は確認されなかった.
  • 奥嶋 政嗣, 石井 亜也加
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_521-I_534
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    温室効果ガス排出削減に向けて,運輸部門においてもモーダルシフトの促進に加えて,EV・PHVといったクリーンエネルギー車両(CEV)への転換を促進することも必要である.ここでCEVの普及に関しては,社会的相互作用が影響することが考えられる.本研究では,局所的相互作用(同調効果)を考慮して,CEV普及促進策を検討するためのマルチエージェントモデルを構成する.ここで,エコカー購入意向に関するアンケート調査結果を用いて,環境意識と局所的相互作用を考慮してCEV保有意向モデルを記述する.また,燃費と車両走行距離の関係についてもモデル化し,二酸化炭素排出量を算出可能とする.このシミュレータを用いて各種シナリオに関して,CEVの普及状況を比較する.これより,CEV普及に関して社会的相互作用の影響を把握できる.
  • Chaoda XIE, Daisuke FUKUDA
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_535-I_548
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    Given the limitations of new urban railway construction in the Tokyo metropolitan area, a time-varying fare policy is expected to be one of the most effective measures to spread the concentrated peak demand. This paper presents an empirical study that examined the theoretical time-varying marginal utility model introduced by Vickrey (1973), using data on urban rail commuters in Tokyo. Then, the departure-time-choice model, under deterministic user equilibrium, was proposed by integration with the empirically identified time-varying marginal utility model. The outputs of the equilibrium model were compared with the results from the traditional constant marginal utility model; our results indicated that the former outputs would be more suitable for a commuting pattern with longer travel distance, similar to the Tokyo case. The equilibrium scheduling pattern and the first-best pricing strategy were examined; our study showed that the time-varying marginal utility model was capable of capturing the marginal external cost more precisely for travelers with a relatively flexible arrival time.
  • 奥嶋 政嗣, 堀 広毅
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_549-I_557
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    高速道路料金政策による地方都市圏への影響を定量的に把握することを目指して,高速道路料金設定に対応した統合型交通均衡配分モデルが構築されている.本研究では,徳島広域都市圏を対象とし,対象圏域への流出入自動車交通需要に関して,自動車使用本拠を基準とした交通需要関数を適用し,統合型交通均衡配分モデルに組み込んだ.一方,都市間交通における交通機関選択モデルを構築し,高速道路料金政策が公共交通需要に与える影響を定量的に表現可能とした.これらのモデルを連動させ,本四架橋区間に着目した料金設定について,交通流動への影響を分析した.これより,高速道路料金設定による地方都市圏内の交通流動と圏域外からの来訪交通による道路交通需要および公共交通需要への影響を把握することが可能となった.
  • 関谷 浩孝, 諸田 恵士, 高宮 進
    2014 年 70 巻 5 号 p. I_559-I_568
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/05/18
    ジャーナル フリー
    国道4号上の2区間(約31km及び19km)で1年間に取得されたプローブ旅行時間データを用い,データの取得状況と旅行時間信頼性指標値の信頼度との関係を分析した.具体的には,仮想的にプローブ旅行時間データが部分的に取得できていないことを想定した標本データセットを作成し,これから算定される旅行時間信頼性指標の標本値と真値との差を分析した.この結果,一定の信頼度で旅行時間信頼性指標値を算定するために必要となるデータ取得日数に関し,次の知見を得た.旅行時間のばらつきの大きな区間では,必要なデータ取得日数は多くなる.旅行時間のばらつきの大きな区間では,欠測区間長割合が大きくなると,必要なデータ取得日数は増加する.評価対象日数が増加すると,必要なデータ取得日数が評価対象日数に占める割合は概ね減少する.
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