2014 年 70 巻 5 号 p. I_443-I_452
線引き制度は,無秩序な市街地拡大の防止を目的として1968年の新都市計画法で導入された.本研究が着目する香川県は,田園都市構想と線引き制度とを同時期に,それぞれ総合計画および都市計画の要として導入した.その後,前者は地域・都市づくりの基本理念として連綿と受け継がれているが,後者については2000年以降に制度廃止を必然とする意見が卓越し,2004年には全県レベルで線引き廃止が決定された.本稿は,目標都市像としての田園都市構想とその実現手段の一つとしての線引き制度との不整合に注目し,計画体系の観点から制度廃止の原因や経緯を考察することを目的としている.また,線引き廃止後に導入された新たな土地利用規制の効果を分析し,衰退に向かう地方部の再都市化を促す集約型都市構造の実現に必要とされる制度設計の課題を示す.