抄録
これまで人の交通選択行動をモデル化する際には,個人属性や代替案のサービスレベルを用いて分析されることが多かった.しかしながら,現実には親しい他者の選択行動からなんらかの影響を受けていると思われる.例えば,同じ職場や学校の仲間といった同じカテゴリーに属している人が選択している手段を,自己の選択要因の一つにしている場合である.しかし,従来のモデルではこうした職場の情報を,規模(従業員数)や立地等をダミー変数として説明変数に用いることが多かった.そこで本研究では事業所や学校ごとに居住地の分布の状態を定量化する指標として,状態のフラクタル次元の導入を試みた.そして,分布状態を表す他の指標と状態のフラクタル次元を交通手段選択モデルに導入し,比較することで状態のフラクタル次元の導入可能性の検討を行った.