抄録
2012年に新たな格安航空会社(LCC)が国内航空路線に参入し,航空市場や都市間旅客流動に変化をもたらした.空港・航空政策の検討にあたり,旅客の需要予測や需要変動の分析は,政策効果の評価において重要な役割を果たしているが,このLCC参入による影響については,まだ定量的な実証分析が充実していない.そこで本研究は,新たなLCCが参入した関西-新千歳路線を対象に,季節調整型ARIMAモデルによる短期需要予測を応用し,当該路線に新たに誘発された航空需要と,既存航空会社からLCCへと転換した航空需要の月別変動を定量的に推定した.分析の結果,既存航空会社からLCCにシフトしたと考えられる旅客需要量や,オフピーク時において大きな路線需要の誘発効果が見られたことなど,新たな定量的知見が得られた.