抄録
近年,登下校中の児童が死傷するといった痛ましい子どもの交通事故が連続的に発生したことを受け,通学路の緊急合同点検の実施といった,安心で安全な通学路環境の構築に向けた取り組みが活発化している.子どもの交通安全対策・教育は,発達に応じた運動能力・認知判断能力の限界を考慮した上で実施されなければならないが,交通社会における子どもの能力について,安全教育・対策の評価に資する程の定量的,客観的な知見が十分であるとは言えない.本稿では,子どもの歩行者事故の典型類型である道路横断時の事故に着目し,接近車両の速度や距離に対する小学生の横断判断能力について実験的に考察した.その結果,小学生は成人と比べて車両速度に対応した判断ができていないこと等が明らかとなった.