抄録
近年,公共交通施設や建築物のバリアフリー化が進められているが,一部の誘導サインは視覚障害者や高齢者にとって利用困難な場合がある.本研究では視線計測装置を用いて鉄道駅周辺で歩行実験を行い,高齢者の視覚探索特性の観点から路面誘導サインの効果を検証した.実験の結果,路面誘導サインは吊り下げ型サインに比べて,発見率,発見距離,誘目性に関する聞き取りの評価が低い一方で,注視時間が短く,可読性および自分にとっての有効性に関する聞き取りについて高い評価が得られた.また,一度発見するとそれ以降路面を意識して歩行する傾向が見られた.さらに,著者らの先行研究と比較した結果,高齢者群は非高齢者群に比べて路面誘導サインの発見距離が短く注視時間も短いが,誘導に必要な情報を読み取れていることが示唆された.