抄録
全国47都道府県間動的応用一般均衡モデルを用いて,南海トラフ巨大地震による製油所被災の経済被害を推計した.本研究の特徴は応用一般均衡モデルにおける労働投入と資本ストック利用の間の代替の弾力性および地域間交易の代替の弾力性の値を,モデルによる東日本大震災の経済影響の再現を通しカリブレートした点にある.本研究で設定した製油所被災シナリオに基づく場合,日本の実質GDPの年間損失額は約22兆620億円と推計された.また製油所の被災が化学産業や自動車産業の生産額に与える影響を分析し,他産業への影響は当該産業の地域間交易の代替の弾力性の値により異なることが明らかとなった.今後は他産業やインフラの被災を総合的に考慮した南海トラフ巨大地震の被災シナリオを構築し,応用一般均衡モデルによる経済被害推計を行う.