2017 年 73 巻 5 号 p. I_215-I_223
インフラストラクチャーのような相互依存性を有するシステムにおいては,ひとつのシステム内の局所的な障害による影響が複数のシステムに波及し,大規模な障害に発展する現象(カスケード故障)が発生する恐れがある.本研究では,電力網と通信網の相互依存関係を想定したモデルを拡張し,フローを考慮した過負荷による故障と依存性を考慮した故障を表現し,相互依存ネットワークにおけるカスケード故障のシミュレーションモデルを構築した.2003年のイタリア大停電を背景とした条件をモデルに入力して数値計算を行った結果,単体の場合に頑健なネットワークであっても,相互依存性によって脆弱性が大きく増大する危険性があることが示唆された.ネットワークの脆弱性を適切に評価するためには,相互依存性による影響を考慮することが必要不可欠である.