2017 年 73 巻 5 号 p. I_941-I_947
歩行者用信号の青点滅表示を長くすることは,青点滅終了時における残留歩行者を抑制する効果が期待できる.特に,様々な事情により横断速度が遅い歩行者に対して効果的と考えられる.しかし一方で,青点滅表示が長いことによって,その間に横断を始めるという信号無視横断を助長することが懸念されている.こうした信号無視の助長という欠点が,横断速度が遅い歩行者にも認められるかを検証することを目的として,既存の研究で横断速度が遅いことが確認されている高齢者や移動制約者に着目し,そうした人々の信号無視の実態を一般歩行者と比較するための調査を行った.
その結果,歩行者用信号が青点滅表示及び赤表示中に横断歩道に到着した歩行者に占める横断を実行した者の割合は,非高齢者よりも高齢者や移動制約者の方が少ないことが確認された.