2020 年 75 巻 6 号 p. I_109-I_116
一般的な交通行動モデルは,必ずしも現実的とは言い難い人間観の前提を置くと考えられるが,このモデルの学習により,前提とされる人間観の強化が想定される.その理由として先行研究においては,人間が利己的であるという前提を置く経済学の専攻や学習により,学習者自身の利己性や,人間は利己的な存在であるという人間観が強化されることが示唆されている.そこで本研究では,モデルに関する講義が選択科目として開講されている東京理科大学理工学部土木工学科3年生を対象にアンケート調査を実施し,分散分析により比較することで,モデル学習の影響を検証した.その結果,交通行動モデルに関する講義の履修により,人間は単純な目的のために単純な動機に基づいて行動をしている,と考える傾向である単純人間観が高まることが実証的に示唆された.