2020 年 75 巻 6 号 p. I_37-I_42
自然災害リスクの認知が高くても,適切な防護行動を取らない自然災害リスク認知のパラドックスが存在する.リスク認知のパラドックスの存在は,避難遅れが頻繁に発生している豪雨時の避難行動を慎重な思考による行動として取り扱うことに疑問を投げ掛けるものである.そこで,本研究では,状況認識を重要視している自然主義的意思決定モデルを援用し,豪雨時の避難行動の意思決定過程をモデル化する.豪雨時に周辺状況は時々刻々と変化するが,その周辺状況の認知とともに水害発生への意識も変化するだろう.避難実行までの意識変化をモデル化するその際に,説明変数に状況認識を取り入れる.具体的には,平成24年7月の九州北部豪雨の際に熊本市内で浸水被害を受けた龍田地区の住民を対象に避難実行までの意識変化を表現できるモデルを構築する.