2021 年 76 巻 5 号 p. I_1477-I_1484
本研究は,近年の東京圏における働き方の変化を踏まえて,働き方が鉄道通勤の時刻選択に与える影響を実証的に分析する.まず,鉄道通勤者を対象に実施したアンケート調査の結果から,行政主体の時差通勤やテレワークを促す取り組みの期間前と期間中における通勤行動や多様な働き方制度の利用状況などを示す.次に,混雑路線の通勤者を対象とした出社時刻選択モデルの推定結果から,時差通勤利用の通勤者は,早出と遅出に分散,フレックス制利用の通勤者は,混雑路線によって傾向が異なることを示す.最後に,このモデルを用いて,鉄道通勤者の多様な働き方の制度利用率が高まると,混雑路線のピーク時の通勤者数は確かに減少するが,制度利用率が現状の2倍でもこの値は最大で3%程度の減少に留まることを示す.