2021 年 77 巻 3 号 p. 174-183
オリンピック・パラリンピックや国際博覧会などの大規模イベント時には,観客の集中による群集事故や,地震・テロ等の突発事象の発生時の避難誘導など人の誘導が大切となる.日本では,歩行者空間の通行方向の案内が場所によって左右で異なっており,歩行者を適切に誘導する上での課題がある.世界的には,歩行者の通行方法は,自動車の通行方法と同じであり,施設の設計もそれに基づいて行われるため,スムーズな通行や避難誘導が可能となっている.本稿では,文献調査と道路交通法制の変遷を踏まえ,日本では歩行者の通行方法が一部しか定まっていないことを明らかにする.その上で,群集の特性に応じ,左側通行を基本とした,平時の歩行者の安全確保とイベント時の適切な誘導に対応した歩行者空間づくりのポイントについて整理を行った.