2022 年 77 巻 5 号 p. I_117-I_125
本研究では,近年激甚化する豪雨による土砂災害リスクや洪水災害リスクの抑止のため,健全な森林管理を実施することで向上するグリーンインフラ機能と災害抑止効果の計測を山梨県を対象に行った.具体的には,現状で放置林となっている林地において森林管理がなされたことによる表面侵食防止効果と表層崩壊防止効果を計測した.前者は,USLE方式により森林管理の有無による侵食土砂量変化を算出し,後者は樹木根系が表層土を斜面につなぎとめる作用から求められる斜面安全率変化を算出した.その結果,間伐等の森林管理が適切に行われるとすれば,表層崩壊発生頻度は減少し,侵食土砂量は年平均33万トンの削減に至ることが示された.またそれらを代替法を用いて貨幣評価をすると約73億円の便益になることが示された.