2023 年 78 巻 5 号 p. I_79-I_88
本稿は,流域全体を最適化する治水システムの知見蓄積に向け,ドイツ・バイエルン州における「洪水防御行動計画 2020 プラス」を対象に,同州の治水事業の枠組みや既往洪水を整理した上で,行動計画の 構成や内容を明らかにするものである.その大きな特徴として,4 つのサイクルによる持続性の高い洪水 対策の仕組みの構築,計画超過洪水への対策によるレジリエントな治水システムの構築を指摘した.さら に,流域全体の治水システムとして,レジリエントな治水システムへの転換,「浸水地域」制度による洪 水防御エリアの明確化,河道の復元による自然の氾濫原の創出,超過洪水用遊水池の建設による遊水機能 の強化が重要な役割を担っていることを指摘し,日本への展開可能性を考察した.