2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17040
本検討では,台風諸元と堤防条件を変化させた場合における浸水開始時間への影響の検証を目的とし,東京都の最悪想定より浸水開始時間が早くなる台風の有無と,浸水開始時間の空間的分布特性に着目した検討を行った.結果,浸水開始時間の分布特性は台風諸元よりも地形特性に敏感であることがわかり,東京湾奥部の西側や隅田川の湾曲部と分岐点が重なる地域などで浸水開始時間は早くなる傾向にあった.また,本研究の条件下においては,東京都の想定経路より浸水開始が早くなるケースはなかった.特定の諸元のみを変えた検討では,移動速度が遅いと,多くの地域で30分以上遅くなる傾向が見られた.一方で,1m嵩上げした場合において,移動速度が遅いケースでは5分以上遅い地域が,移動速度が速いケースでは5分以内の差である地域が多く見られた.