土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
81 巻, 28 号
特集号(木材工学)
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集号(木材工学)論文
  • 五十嵐 盟, 手塚 大介, 久保島 吉貴, 加藤 英雄, 原 忠
    2025 年 81 巻 28 号 論文ID: 24-28001
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル 認証あり

     近年,環境貢献の観点から木材の土木分野への利用が進んでおり,最近では木杭の吸水効果により地盤改良効果が促進される例が報告されている.そこで筆者らは,地下水位を設けたまさ土の模型地盤に木杭と比較用の人口材料を設置し,試験開始時及び1年後にサウンディング試験,含水比・飽和度測定,引抜試験,木材含水率測定を実施した.一連の結果から,地下水位の影響で水位以浅の地盤が毛管現象により飽和状態に近づき,摩擦抵抗が低下したことが示された.また,地盤の締固めや飽和度が類似した地盤内に埋設された杭では,側面粗さが引抜荷重に影響することが示された.さらに,毛管現象により地下水を吸い上げた木材の含水率と地盤飽和度が深度毎に類似した傾向を示し,相互に影響しながら平衡状態に近づく可能性が示唆された.

  • 戸沼 淳, 平沢 秀之, 菊池 幸恵, 輕米 晃汰
    2025 年 81 巻 28 号 論文ID: 24-28002
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル 認証あり

     災害時の人命救助や物資輸送のための緊急仮設橋として,著者らは木材を利用したトラス橋の開発に取り組んでいる.木材は鋼材と比較して軽量なため,人力での組み立てが可能であり組み立て時間も短縮できる.復旧活動の期間だけの一時的な使用,または新設橋が完成するまでの短期間の使用とすれば,木材の短所である長期耐久性はそれほど問題とならない.2010年に開発した災害復旧用木製ワーレントラス橋は,半日以内で架設が完了するが,接合鋼板を製作する際,溶接による熱ひずみが発生しその除去が困難であった.2019年に開発した2×8材を使用したトラス橋では,形鋼を利用して溶接を不要とする改良を行ったが,橋軸直角方向の剛性が低く振動が発生しやすい欠点が明らかとなった.そこで本研究では,それらの欠点を改善するため,次のような改良を行った.(1)部材接合部には厚さ3.2mmの鋼板を2枚使用する,(2)橋門構を橋の端部の他,中間部にも設置する,(3)鋼板は溶接せず,折り曲げ加工を行って部材の連結を行う.その結果,橋軸直角方向の振動はほとんど発生せず,死荷重は9.1kNに抑えることができた.また屋外での架設実験では,架設時間はわずか3時間8分であった.

  • 下妻 達也, 渡辺 浩, 山本 健, 藤田 和彦, 後藤 明
    2025 年 81 巻 28 号 論文ID: 24-28003
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル 認証あり

     近年,直交集成板(CLT)を橋梁の床版へ適用する事例が見られる.CLTは木材の繊維方向に対する性質の違い等により,力学的挙動は極めて複雑となる.著者らはCLTの力学的特性の数値解析に関する研究に取り組んできたが,得られた結果の妥当性について検証が十分行えていない.本研究ではCLTの曲げ試験とそれを忠実に再現した数値解析を実施し,実験値と比較することで解析結果の妥当性の検証を行う.結果,CLT製造用のラミナの繊維方向のヤング係数,曲げ試験における比例限界応力の実験値があれば,数値解析でCLTの挙動をおおよそ捉えられることが分かった.

  • 及川 大輔, 後藤 文彦, 青木 由香利
    2025 年 81 巻 28 号 論文ID: 24-28004
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル 認証あり

     本研究では供用から26年経過した大断面集成材桁橋(深沢橋)の剛性や使用性について明らかにすることを目的として,タブレット端末を用いた簡易的な振動試験から固有振動数を同定し,数値解析モデルで計算したみなし架設当初の固有振動数と比較することによって,経年による橋梁全体の曲げ剛性の低下を確認した.また,単独・群衆歩行のそれぞれにおいて,振動応答の測定を行い本橋の振動使用性について検討した.その結果,橋梁全体の曲げ剛性は,みなし架設当初と比べて10%程度低下しているものの,数値解析によって算出された主桁たわみは設計仕様を満たしており,振動使用性では,歩行者が不快に感じるほどの振動応答は確認されなかった.そのため,供用から26年経過した近代木橋においても一定程度の使用性能を有していることが確認された.

  • 青野 紫音, 及川 大輔, 後藤 文彦, 青木 由香利
    2025 年 81 巻 28 号 論文ID: 24-28005
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル 認証あり

     既存橋梁の点検において,振動試験による固有振動数の測定は比較的安全かつ容易であり,固有振動数がわかれば有限要素モデルから部材の剛性をある程度は推定できる.本研究では木製の上路アーチ車道橋であるかじか橋を対象に,アーチ部や縦桁接合部に部分的腐朽を与え,木部材の部分的腐朽が木橋全体の固有振動数に与える影響を検討した.その結果,固有振動数はヤング率の部分的低減に伴って,二次の多項式で回帰できる高い相関を示すことを確認した.さらにこの低減曲線の回帰直線の傾きを用いて感度解析をしたところ,各振動モードにおける振動の腹の部分の感度が高く,節の部分の感度が低いことが明らかになった.また,腐朽箇所を組み合わせた場合の感度は1箇所腐朽時の感度の大きさを足し合わせたものとほぼ一致することが明らかになった.

  • 田中 こころ, 吉田 雅穂
    2025 年 81 巻 28 号 論文ID: 24-28006
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル 認証あり

     土木分野における木材の利用促進を目的に,建築材料であるCLTの軟弱地盤対策への利用が提案されている.この工法は面材であるCLTを地盤中に水平または鉛直に設置するものであるが,すべりに対する安定性の評価には,同地盤のせん断特性が必要である.本研究では乾燥した砂質土中にCLTを設置した地盤を模擬し,定圧一面せん断試験を実施した.その結果,砂と木材の接触面のせん断抵抗は砂同士のせん断抵抗よりも小さいことを明らかにした.また,絶乾状態の木材と高含水率状態の木材の表面をデジタル顕微鏡で観察した結果,木材が高含水率状態となることで表面の高低差が大きくなることを明らかにした.

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