災害時の人命救助や物資輸送のための緊急仮設橋として,著者らは木材を利用したトラス橋の開発に取り組んでいる.木材は鋼材と比較して軽量なため,人力での組み立てが可能であり組み立て時間も短縮できる.復旧活動の期間だけの一時的な使用,または新設橋が完成するまでの短期間の使用とすれば,木材の短所である長期耐久性はそれほど問題とならない.2010年に開発した災害復旧用木製ワーレントラス橋は,半日以内で架設が完了するが,接合鋼板を製作する際,溶接による熱ひずみが発生しその除去が困難であった.2019年に開発した2×8材を使用したトラス橋では,形鋼を利用して溶接を不要とする改良を行ったが,橋軸直角方向の剛性が低く振動が発生しやすい欠点が明らかとなった.そこで本研究では,それらの欠点を改善するため,次のような改良を行った.(1)部材接合部には厚さ3.2mmの鋼板を2枚使用する,(2)橋門構を橋の端部の他,中間部にも設置する,(3)鋼板は溶接せず,折り曲げ加工を行って部材の連結を行う.その結果,橋軸直角方向の振動はほとんど発生せず,死荷重は9.1kNに抑えることができた.また屋外での架設実験では,架設時間はわずか3時間8分であった.
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