2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18052
沿岸海域の底質が悪化している場所にカキ殻を敷設し,底生生物と魚類相の変化を調べるとともに,安定同位体を用いた食物網解析を行った.敷設後3ヶ年平均の底生生物の種類数,多様度指数(H’),魚類の目視確認個体数は18.2±10.3種類,3.1±0.7,4.8±6.3個体/m2となり,対照区の3.5倍,2.2倍,7.5倍となり,ベントスの増加と魚類の蝟集が確認できた.また,敷設区の底泥,軟体動物,節足動物,敷設区周辺で漁獲された魚類のδ13Cは-20.2±0.8,-18.1±2.3,-17.1±0.9,-16.2±0.6‰,δ15Nは9.1±0.5,12.2±1.7,13.2±1.5,16.4±1.0‰となり,栄養段階に応じた同位体比の上昇が見られ,魚類による敷設区ベントスの摂餌は否定されなかった.一連の結果から,カキ殻を敷設することによって底生生物が増加し,それらを餌とする魚介類が増加することが示唆された.