2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25009
火力発電所の冷却系水路の取排水路部より採取された海水中粒状有機物(POM)と付着生物の炭素・窒素安定同位体比分析を行った.6つの発電所に流入するPOMの炭素・窒素安定同位体比を比較したところ,日本海側の3施設では河川から流入するPOMが卓越するのに対して,太平洋側の3施設では海域で生産された植物プランクトン由来の有機物が卓越することが示された.一方,日本海側・太平洋側それぞれ1施設で水路に付着するカキ・イガイ・フジツボの炭素・窒素安定同位体比を測定したところ,いずれの施設においてもPOMの同位体比よりも値が高く,海域起原の有機物を選択的に同化していることが示された.取水海水のPOM濃度と無機態窒素濃度の間には正の関係がみられたことから,栄養塩削減がPOMとそれを摂餌する付着生物の削減につながることが期待されるが,効果の定量的予測・評価には,さらなる現場知見の集積と定量モデルの構築が必要である.