土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
80 巻, 28 号
特集号(木材工学)
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集号(木材工学)論文
  • 下妻 達也, 渡辺 浩, イ スンジュ , 大隣 昭作
    2024 年 80 巻 28 号 論文ID: 23-28001
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル 認証あり

     小規模吊橋指針・同解説によると,橋長200m以下で幅員が1車線を超えない吊橋を小規模吊橋と呼ぶ.歩行者専用の小規模吊橋では製材や板材を敷き並べた木床版,グレーチング床版が多く用いられるが,床版種別が歩行時に生じる変位やメインケーブル等の張力,振動特性に及ぼす影響の検討はあまり行われていない.本研究では実際に供用されている無補剛小規模吊橋を対象とし,従来型木床版,グレーチング床版,CLT床版を適用した場合の歩廊部の変位やケーブル張力,振動特性等の検討を数値解析にて実施した.結果,従来型木床版はグレーチング床版と同程度の歩行のしやすさを有することが分かった.

  • 堀越 健太郎, 佐々木 貴信, 澤田 圭, 佐々木 義久
    2024 年 80 巻 28 号 論文ID: 23-28002
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル 認証あり

     LVL(単板積層材)を用いた湾曲材は,形状の自由度が高い木質材料である.例えば,層を構成する単板の厚さが薄いために,湾曲集成材よりも小さな曲率半径まで曲げることができる.よって,湾曲LVLは構造用途をはじめとした幅広い分野に活用できることが期待できるが,強度性能に関する研究例が少ない.本研究では型枠を用いて製造した平使いの湾曲LVLの強度性能評価を目的とし,圧縮型の破壊試験を行った.その結果,湾曲による強度性能の低減は湾曲部の曲率半径が420mmの試験体で平均6.4%にとどまった.湾曲LVLは湾曲集成材に比べ,強度の低下率が小さい材料であることが判明した.

  • 渡辺 浩
    2024 年 80 巻 28 号 論文ID: 23-28003
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル 認証あり

     2023年5月,水辺の橋として親しまれてきた木橋が落橋した.この橋は西アフリカ産のボンゴシ材が使用されたアーチ橋で,27年間供用されていた.同様の木橋は1990年代に国内に多数が架けられた.外国での実績を元に架設当初はメンテナンスフリーで耐用年数50年とも言われていたが,国内では短期間で腐朽することが明らかとなった.このような木橋が多数架けられたのにはメンテナンス不要なものがよいとされた当時の永久橋神話が影響していると考えられる.今では橋の点検診断と早期補修は当然のものとなっている.この橋を通じて,橋の維持管理の方法を整理すると共に,本橋の経験を活かしていくために,その教訓について考察する.

  • 沼田 淳紀, 村田 拓海, 外崎 真理雄, 高原 繁
    2024 年 80 巻 28 号 論文ID: 23-28004
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル 認証あり

     木材は,地中の地下水位以深では腐朽や蟻害などの生物劣化を生じにくいので,地下水位が浅い環境で地震時に生じる液状化の対策材料として使用され始めている.木材を使用する利点の一つとして,木材に固定化された炭素を長期貯蔵できることがあげられる.しかしながら,このような炭素貯蔵効果は国際的に認知されているわけではなく,今後,この炭素貯蔵効果に対する科学的知見を蓄積し,吸収源としてカウントできるようにしていく必要がある.そこで,8年前に液状化対策として打設した丸太の掘出し調査を行った.ここでは,対象地点の地下水位観測記録を示し,打設から2年,4年,8年経過後の丸太の状況を示し,8年経過後の現地調査結果から,丸太は地下水位以浅も含めて健全であったことを示す.

  • 羽田野 早耶, 佐々木 貴信, 澤田 圭, 宮崎 淳子, 中村 神衣, 高梨 隆也, 山内 秀文
    2024 年 80 巻 28 号 論文ID: 23-28005
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル 認証あり

     CLT(直交集成板)は,近年,中大規模の木造建築や土木分野への利用が期待されているが,国産CLTの活用促進のためには製造コストや施工コストが課題となっている.国産CLTの製造には油圧式プレスが用いられるが,海外では油圧プレスよりも導入コストが低い真空プレスを用いてCLTを生産している工場もある.真空プレスは圧締圧力が小さいが,真空ポンプと材料を覆うシートがあればプレスが可能であり,様々な寸法や形状のCLTの製造に対応することができる.本研究では,国産材のCLT製造における真空プレスの可能性を検討することを目的として,樹種や接着剤の条件を変えたCLTを真空プレスと油圧プレスを用いてそれぞれ作製し,曲げ性能や接着耐久性を評価した.

  • 及川 大輔, 野田 龍, 後藤 文彦, 青木 由香利, 森岡 吉己
    2024 年 80 巻 28 号 論文ID: 23-28006
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル 認証あり

     秋田県の山間部などに架かる木歩道橋では,冬季の雪荷重による落橋の危険性が問題となっている.対策として雪荷重に耐えられるほどに強度を高めるのも1つの方法であるが,雪荷重が作用するのは冬季のみであり,その期間のためだけに橋自体の性能を規定することは,コスト面などから見てもあまり合理的ではない.そこで,冬季の間だけ構造を変換させて雪荷重を回避する床版開閉式構造を提案する.本研究は,この構造を取り入れる事による積雪軽減性能を調査するため,屋外暴露試験を実施し,橋への積雪量や積雪状況などの検討を行った.その結果,橋への積雪は主桁や開けた床版の上面のみで,橋全体を覆う積雪は確認されず,試算した雪荷重は床版を開けない場合と比較し,50%程度減少するなど雪荷重を一定量軽減させることが確認された.

  • 戸沼 淳, 平沢 秀之, 加藤 真吾, 菊池 幸恵
    2024 年 80 巻 28 号 論文ID: 23-28007
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル 認証あり

     緊急仮設橋に要求される性能は強度や耐久性よりも架設の容易さや架設時間が短いことが重視される.著者らは架設時間の短縮化を目指し,折り畳める新しい木製トラス橋を開発中である.これまでに実物大モデルによる実験を行い,短時間架設,作業の容易性を実証した.しかし,完成した橋梁の連結部には,各部材を連結してトラスパネルとする接合鋼板,トラスパネルを連結する蝶番,展開後トラスパネルを固定する連結鋼板の3種類を必要としていたため,重量増,コスト増の要因となっていた.そこで本研究では,これらの連結部の合理化を目的とし,部材接合と折り畳みの両機能を備えた蝶番を新たに考案した.この蝶番は下弦材連結部において大きな引張力を受けるため,その強度を載荷実験により確かめ,更に折り畳み-展開の作業性,作業時間を検証した.

  • 今井 良, 原 忠
    2024 年 80 巻 28 号 論文ID: 23-28008
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル 認証あり

     屋外用木製品は腐朽の早期発見と適切な措置で長期利用が可能となる.個人の経験や能力に頼らない効率的な診断には,客観性のある定量的な判別基準と簡易な診断手法が求められる.本研究では,防腐薬剤処理された木製立入防止柵を対象に,支柱地際部から得られたピロディン打ち込み深さ(Pe値)を用い,推定した残存強度,健全材のPe値分布,健全なPe値との差分(⊿Pe値)を基に早期劣化判別手法を検討した.その結果,初期強度の1/3を下回った場合を耐用限界と定義した場合,耐用年数は約15年と算定され,⊿Pe値から算定される耐用年数と同等の値を示した.健全材のPe値分布を用いた手法では,施工後経過年数10年程度で劣化の兆候を検出できた.本研究成果を応用することにより,点検・診断の効率化が期待される.

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