2023 年 79 巻 5 号 論文ID: 22-00152
福山港泊地において約2か月間の潮位観測を実施し,潮位変化に及ぼす局地気象学的な影響を調査した.福山港泊地は,瀬戸内海沿岸から内陸部に向けて約8.5km入り込んだ細長い水路である.この泊地では,局地気象学的な影響として,気圧変化に伴う吸い上げ効果の他,泊地奥方向の東風による吹き寄せ効果が観測された.台風接近時のような極端な気象条件の場合,これらの効果によって1mを超える海面上昇が生じる可能性がある.また,泊地では常時,周期42分程度の副振動が現れており,2021年9月の台風接近時には副振動によって約0.4mの海面上昇が生じた.これらのことから,満潮時に台風が接近する際には吸い上げ効果と吹き寄せ効果に加え,副振動による海面上昇が加わることで,平均海水面より潮位が3m以上上昇する可能性がある.