2023 年 79 巻 8 号 論文ID: 23-00083
地震時斜面滑りの計算に使われるNewmark法では,地震動が滑り面の降伏加速度を超えることで滑り発生を規定しているが,実際には滑り直前のわずかな変位により滑り開始が一意的に決まる可能性が模型振動台実験などで示唆されてきた.そこで直前変位を表すバネを従来Newmark法のスライダーに直列接続した「バネ支持Newmark法」を開発し,その適用性を模型実験との対比により確認した.小さな滑り開始変位u0を与えることで斜面の滑り開始は従来法での降伏加速度を大きく超過する現象が見られ,模型実験でも類似の加速度超過現象が確認できた.また実測地震動を用いた現実的斜面の滑り計算により,わずか数mmのu0を考慮することで従来法に比べて降伏加速度の大幅超過や累積滑り変位の大幅低下など設計への大きな影響が示された.