2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16166
河川水表面に作用する風応力は,従来,一時的な水位上昇のみに影響するものと見なされてきた.気候変動の進展に伴い,スーパー台風の襲来が予測される中,河川流計算および河川工学における風の従来の取扱いには自ずと疑問が生じる.本研究では,実河川洪水流における風影響を評価することを目的とし,令和元年東日本台風時における江戸川を対象とした数値実験を実施すると共に,長期の東京湾潮位・河川水位・気象値に関する観測データを分析した.その結果,風速の増大によって潮位だけでなく,河川水位も上昇していることが観測データから示唆された.また,江戸川の数値実験より強い風が河川水表面に作用した場合,流速と水位が応答し,かつ,増水期に作用した風による水位上昇が下流に伝播し,風が止んでいるピーク期にも影響し得ることが示された.