2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17131
近年,神奈川県七里ヶ浜では侵食が著しい.その原因には,七里ヶ浜の東端を区切る稲村ケ崎を漂砂が回り込んで流出したことが考えられている.しかしその実証的議論は十分行われていない.そこで,まず稲村ケ崎沖での潜水調査により海底面状況を観察し,底質採取を行った.次に,岬周辺での漂砂は主に高波浪時に起こると考えられることから,衛星画像より稲村ケ崎沖での波峰線形状を読み取り,高波浪時における波の入射方向を推定し,漂砂の方向について調べた.さらに高波浪が斜め入射する条件下での海浜流を計算し,沿岸流の分布より七里ヶ浜から稲村ケ崎を超える東向きの漂砂が起こり得ることを示した.この結果,西寄りの方向から高波浪が作用した場合,稲村ケ崎沖を通過して七里ヶ浜の底質の一部が東側へと流出する可能性が高いことが分かった.